公開日: 2024/12/20
物流DXとは?必要性から推進のポイント・取組事例まで紹介
物流DXは、既存の業務をデジタル化・機械化し、業務全体や働き方を変革する取り組みのことです。業務の効率化やコスト削減が測れることから、物流需要に対する人手不足対策として推進が求められています。
この記事では、物流DXの定義や必要性、実際にTUMIX(運送業専用業務支援システム)を導入した物流DXの事例を紹介します。
・物流DXの具体的な取組内容
・物流DX推進のポイントと事例
物流DXとは
物流DXとは、業務の機械化・デジタル化を通じて物流のあり方そのものを変革する取り組みを指します。ここでは、物流DXの定義と、よく混同されるデジタル化との違いを解説します。
物流DXは物流のあり方を変革すること
物流DXでは、業務の機械化やデジタル化によって、オペレーション業務全体や従業員の働き方を改革し、物流のあり方を抜本的に変革する取り組みを行います。
単なる業務効率化やデジタルツールの導入に留まらず、物流のビジネスモデルそのものを根本から変えることが目的です。
デジタル化との違い
デジタル化とは、デジタル技術を活用して既存の業務を効率化する取り組みのことです。例えば、これまで手作業で行っていたドライバーの勤怠管理を、勤怠管理ツールを導入して自動化し、データの集計や出勤簿の作成を効率化することが挙げられます。
このような取り組みは、主に個々の業務や事業部単位で実施されるのが特徴です。
一方、物流DXは、デジタル技術を活用して企業全体の物流におけるビジネスモデルを抜本的に革新する取り組みを指します。デジタル化と比べてより大規模かつ包括的な変革であり、中長期的な視点で進められることが特徴です。
そのため、数百万円から数千万円規模の予算がかかることもあります。
物流DXが企業に必要とされる理由
物流DXの必要性が高まっている主な理由として、以下の4つが挙げられます。
- EC市場の成長
- 小口多頻度納品の増大
- ドライバー不足
- 時間外労働の上限規制
スマートフォンの普及や共働き世帯の増加、さらに感染症の拡大といった社会的な変化を背景に、小口多頻度納品が増加しています。EC市場はさらなる成長が見込まれており、物流需要の増加は今後も続くと予測されています(※)。
しかし、物流業界では依然として慢性的なドライバー不足が続いており、働き方改革の一環として導入された時間外労働の上限規制も、さらなる人手不足を招いているのが現状です。
このように物流需要が拡大するなかで、供給能力が追いつかない状況が続いています。このままでは、物流が担う重要なインフラとしての役割に支障をきたし、サービス水準の低下や配送遅延が発生する恐れがあります。
こうした問題を解決するためには、物流DXによって経営そのものを変革し、労働生産性の向上や働き方改革の推進が必要です。
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物流DXの具体的な取り組み
ここでは、物流DXとは具体的にどのような取り組みなのか、「機械化」と「デジタル化」に分けて紹介します。
機械化
機械化とは、人間が手作業で行っていた業務を機械に置き換えることを指します。特にAI技術が搭載された機械を導入することで、業務の自動化も可能です。これにより、手作業の効率化だけでなく、作業の精度向上も期待できます。
例えば、以下のような機械が挙げられます。
- 自動フォークリフト
- 荷降ろし・積込みロボット
- ピッキング自動化システム
デジタル化
デジタル化とは、アナログで行っていた業務や改善が求められる業務をデジタル技術を活用して支援・置き換えることです。
デジタル化の例は、下記のとおりです。
- 手続きの電子化(運送状など)
- 勤怠管理ツールや配車計画ツールの導入
- マッチングシステムの活用
- 電子マニュアルの作成
- トラック予約受付システムの導入
物流DX推進のポイント
物流DXを推進するうえで、重要なポイントは3つあります。
- 中長期的に取り組む
- 経営陣と現場が連携して取り組む
- DXに精通した人材を確保・育成する
それぞれのポイントについて解説します。
中長期的に取り組む
物流DXは、効果を実感するまでに約5年かかると言われています(※)。そのため、中長期的な視点を持ち、計画的かつ段階的な取り組みが重要です。
まずは物流DXで達成したい具体的な目標を設定し、それに対する現状の課題を明確にすることから始めます。次に、この課題を解決するために必要な技術(機械化やデジタル化)を選定し、適切に導入していきます。
また、進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて計画を見直すことも大切です。
※出典:物流DX講座 ‒ 第1章「DXとは何か」を理解する|全日本トラック協会
経営陣と現場が連携して取り組む
物流DXの推進には、経営陣と現場が密に連携して取り組むことが不可欠です。経営陣は、DXに対する明確なビジョンと戦略を示し、全社的な方向性を定める役割を担います。
一方、現場の従業員は、日々の業務を通じて実際の課題やニーズを把握しています。両者が協力しあうことで、現実的かつ実効性のあるDX施策の策定が可能です。
また、DXの推進は現場の働き方に大きな変化をもたらすため、DXの必要性やメリットを従業員にしっかりと伝えることも大切です。現場の理解を得られないまま進めると、反発を招き、施策が十分に機能しない恐れがあります。
そのため、現場の意見を尊重した取り組みがDX成功の鍵となります。
DXに精通した人材を確保・育成する
DXに精通した人材の育成と確保は、企業が物流DXを推進するための基盤をつくるうえで重要です。例えば、外部の専門家やコンサルタントと連携し、最新技術やトレンドを学ぶ場を設けると、社内の知識やスキルの強化につながります。
物流DXの取組事例
TUMIXは、勤怠管理と配車計画の分野で物流DXを支援するシステムを提供しています。
・TUMIXコンプラ
勤怠管理システムとして、従業員の打刻データやデジタコ(デジタルタコグラフ)との連携を通じて、出勤簿を自動作成します。また、改善基準告示に準拠した勤務状況をリアルタイムで確認することが可能です。
・TUMIX配車計画
配車から請求書の作成までを一元管理するシステムです。これにより、業務の効率化と正確な運用が実現できます。
ここでは、これらのシステムを活用した具体的な事例を2つ紹介します。
事例①TUMIXコンプラ(勤怠管理システム)の導入による物流DX
業務の効率化だけでなく、従業員の働き方改革にも貢献した事例です。
株式会社サンワでは、業務の多くにアナログ作業が残っており、特に労働時間の算出に膨大な時間を費やしていました。この課題を解消するために導入したのが、TUMIXコンプラです。
TUMIXコンプラは、既存のIT点呼キーパーやデジタコと連携することで、点呼時刻や勤務時間のデータを自動で取り込めるツールです。この仕組みによって、これまで課題だった労働時間の算出にかかる工数が大幅に削減され、月に242時間の労働時間削減が見込まれるようになりました(取材時点での集計途中数値)。
さらに、TUMIXコンプラの活用により、改善基準告示に基づいた勤務状況をリアルタイムで可視化できるようになったといいます。また、残業平準化支援グラフを使用することで、ドライバーごとの超過勤務状況を簡単に確認でき、適切な労働管理が実現しました。
事例②TUMIX配車計画(配車計画システム)の導入による物流DX
TUMIX配車計画の活用により、業務の正確性と効率性が向上するとともに、従業員の負担軽減にもつながった事例です。
株式会社サイリクでは、TUMIX配車計画を導入する前、紙の配車表を使用していました。この運用方法にはさまざまな課題があり、特に配車担当者のみが把握している情報が共有されず、担当者間での伝達ミスや入力漏れが発生しやすい状況でした。また、新人の配車担当者を教育する方法についても改善の必要性を感じていたといいます。
TUMIX配車計画の導入により、情報が一元管理されるようになり、社内全体で配車情報を共有できる環境が整いました。この仕組みによって伝達ミスが減少し、データの蓄積が可能になったことで、新人教育にも役立つようになりました。
また、車番連絡表や受領書送付明細といった帳票の手書き作業が不要になり、入力ミスが低減しただけでなく、事務作業全体の効率も向上しています。
その結果、配車業務や事務作業において月75時間の削減効果を実感しています。
>>社内の情報共有を効率化。情報が一元管理され人的ミスの最小化にも貢献!
まとめ
物流DXとは、業務の機械化やデジタル化を通じて、物流のビジネスモデルそのものを変革することを指します。EC市場の拡大やドライバー不足など、物流業界を取り巻く環境の変化に対応するために、物流DXは不可欠な取り組みです。
物流DXを成功させるためには、中長期的な視点を持ち、経営陣と現場が密に連携して取り組むことが重要です。また、DXに精通した人材を確保・育成することも、基盤を形成するうえで欠かせません。
TUMIXの導入事例では、勤怠管理や配車計画といった分野でデジタル化を進めることで、業務効率の大幅な改善や働き方改革を実現できました。
物流DXは短期間で完了するものではありませんが、計画的に進めることで、物流業界が抱える課題の解決や持続的な成長につながります。