公開日: 2023/09/01
2024年問題でドライバーの給料は減る?予測と運送会社が実施すべき対策
- 現時点におけるトラックドライバーの給与事情
- 2024年問題でドライバーの給料にどのような影響をもたらすか
- 給料を上げるための対策方法
2024問題とは、2024年4月以降、トラックドライバーの時間外労働に年間960時間までの制限が課せられることによって起こるとされている諸問題の総称です。そのなかには、トラックドライバーの給料が減少するのではないかという懸念も含まれます。 ドライバーの給料が減れば、運送業界の深刻な課題である人手不足が、さらに悪化する可能性があります。
そこで本記事では、2024年問題によって変化するトラックドライバーの給料と、ドライバー不足に対して運送会社がすべき対策を解説していきます。
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2024年問題によってドライバーの給料は変わるのか
2024年4月より、働き方改革関連法案による時間外労働の規制が運送業界にも適用され、トラックドライバーの残業時間には年960時間の上限が課せられます。
時間外労働が減ることによって、トラックドライバーの給料はどのように変化するのでしょうか。ここでは、トラックドライバーの現状の給料事情と、時間外労働規制後の給料予測を解説していきます。
【現在】ドライバーの給料事情
令和4年賃金構造基本統計調査によると、トラックドライバーの平均年収は全産業の平均年収と比べて19~59万程度低くなっています。 下記の表は「年間賞与その他特別給与額」×12 +「年間賞与その他特別給与額」で算出した平均年収の目安です。
分類 | 平均年収 |
全産業平均 | 4,965,700円 |
大型トラック | 4,773,700円 |
中小型トラック | 4,379,400円 |
大型+中小型トラックの平均 | 4,576,550円 |
この表からも読み取れるように、2024年問題以前から、すでにトラックドライバーの低賃金は問題となっています。 2024年の時間外労働上限規制が施行されると、さらに悪化することが予想されるため、賃金改善は急務であるといえるでしょう。
【960時間上限適用後】ドライバーの給料予測
時間外労働時間の上限規制によって給料が減るのは、残業時間が年960時間以上のドライバーです。2024年4月から新しい法律が適用されると、対象ドライバーの平均年収は最高で62万円減少すると予想されます。
これは、現在の大型+中小型トラックの平均年収から約1.4割減る計算です。現時点でも低賃金であるなか、これ以上給料が減ってしまうのは大問題といえるでしょう。 具体的な算出方法は、以下のとおりです。
- 1日の拘束時間の上限が原則13時間(改正後も同様)
- 労働基準法で定められた1日の労働時間である8時間を13時間から引くと時間外労働の上限は5時間
- 1か月22日出勤と仮定とすると、5時間×22日=月110時間の時間外労働がMAX
- 時間外労働の月110時間×12か月=1,320時間
- 1年あたりの時間外労働1,320時間から時間外労働の上限960時間を引くと360時間
- 時間外労働の適用によって360時間の労働時間が短縮される計算
- 大型・中小型トラックの平均年収4,576,550円を「12か月>1か月22日>1日あたり10時間※」で割ると1時間あたり約1,734円
- 時給1,734円に削減される時間外労働の360時間を乗ずると約62万円
※10時間:同調査による1日あたりの労働時間の平均
なお、全日本トラック協会が実施したモニタリング調査によると、時間外労働が960時間を超えるドライバーが「いる」と回答した割合は29.1%に及びました。(2023年1月に調査実施・2022年10月時点の状況) 今回の結果は、あくまでも予測であるということを理解しておきましょう。
給料が増えるドライバーも出ると予想される
2024年4月以降、反対に賃金が上がるケースもあります。例えば現状の労働時間が720時間前後で、かつ中小企業に勤めているドライバーの場合を考えてみましょう。
2023年4月から中小企業にも適用された時間外労働の割増し賃金と、時間外労働の上限適用で懸念されるドライバー不足が影響し、賃金上昇の圧力がかかると思われます。
2010年から大企業ではすでに適用されていた時間外労働の割増賃金率が、2023年4月から中小企業にも適用されました。月60時間を超える時間外労働の割増し賃金率は、従来の25%から倍の50%に引き上げられ、残業分の給料が大幅にアップしました。
そして、年960時間の時間外労働の上限適用で危惧されているドライバー不足によって、在籍しているドライバーの仕事量は増加すると考えられます。
つまり、現状で年720時間(60時間×12ヵ月)前後の時間外労働を行っている中小企業のドライバーは、時間外労働の増加に加えて50%の割増し賃金が適用されるため給料が増えると予想できます。
2024年問題に向けドライバーの給料の改善が必須
2024年問題によるドライバーの離職を防ぐには、給料を改善することが必要不可欠です。他業種ではすでに賃上げを行った企業も増えてきているため、運送会社も対応していくべきだと言えるでしょう。
改善方法の例としては、主にベースアップ・賞与の支給・定期昇給の3つが挙げられます。詳しい内容は以下の表を参考にしてみてください。
給料の改善方法 | 詳細 | 注意点・特徴 |
---|---|---|
ベースアップ | 従業員全体の基本給を上げる | 一度上げると安易に下げられないため、検討は慎重に行う |
賞与の支給 | 頑張りを評価する | 賞与の有無が企業選びのポイントと考える人も多い |
定期昇給 | 定期的に昇給の機会を設ける | 必ず昇給するわけではないため、「評価されなかった」と就労意欲を失う可能性もある |
歩合を上げる | 従業員の歩合給のベースを上げる・歩合給項目を増やす | 配車や運行パターンにより給料の差が出るため注意 |
給料が改善されれば、ドライバーのモチベーションや、採用活動にも良い影響を与えます。ドライバーのモチベーションが上がると定着率も上がり、運送業界全体の人手不足解消につながるでしょう。
ドライバーの給料を上げるために取り組むべきこと
上記で説明したように、ドライバーの給与改善はすぐに対策すべき重要な課題です。そして給与を改善するためには、会社全体の売上・利益を上げなければなりません。 ここからは、実際に運送会社が取り組むべきことを紹介していきます。2024年問題対策の1つとして覚えておきましょう。
荷主に対して運賃交渉を行う
国土交通省によると、運送会社の営業費用の約4割はトラックドライバーの人件費となっています。つまり、ドライバーの収入を上げるためには原資である運賃の確保が必要です。
ところが、国土交通省の調査によれば、2024年問題が明るみとなった現在においても、7割弱の荷主が運賃交渉を受けていないと回答しています。 そのため、運送会社側から荷主に対して積極的に運賃交渉を働きかけなければなりません。
実際に運賃交渉を受けた荷主の半数以上が値上げに応じ、残りの半数近くが検討中と回答しています。さらに、運賃交渉を受けていない荷主においても、交渉を受けた際には値上げに応じるという回答が多い結果となりました。
荷主に対して運賃交渉を行う場合は、運賃を上げるべき理由を明確に提示することが重要です。現状や今後の予測などを詳しく説明することで、荷主側が交渉に応じてくれやすくなるでしょう。
業務効率化を図り会社全体の生産性を向上させる
業務内容を見直し効率化することで、その分の空いた時間を運行時間にまわせます。運行時間が増えれば運べる荷物の量が増えるため、運送会社の売上・利益も増加が見込めるでしょう。 ここからは、業務効率化につながる方法を具体的に3つ解説していきます。
パレットの導入
パレットとは複数の荷物をまとめて積載できる台のことで、作業効率化のための便利なツールです。日本パレットレンタル株式会社によると、パレット1枚あたり75%もの時間削減につながることがわかっています。
例えば、手作業で荷役作業を行い4時間を要していた場合、3時間の削減になるということです。
また、パレットを導入すればフォークリフトでの積み下ろしが容易になるため、待機時間だけではなく、体力的な負担も減らすことにもつながります。
画像引用:手荷役からパレット利用への切り替えで実現する働き方改革|JPR 日本パレットレンタル株式会社
運送方法の見直し
時間外労働が年960時間に規制されると、とくに長距離運行への影響が大きいと予測されています。運べる荷物が減ってしまうと、会社の売上・利益が大幅に減少してしまいます。
会社の経営を維持するためには、運送方法を見直す必要があります。輸送手段を効率化することで、時間外労働の上限を厳守しながらも運べる荷物の量を維持できます。
2024年問題の解決に効果的な運送方法は「中継輸送」と「モーダルシフト」の2つです。詳細は以下の図や表で紹介しています。
中継運送 | モーダルシフト |
画像引用:物流:モーダルシフトとは – 国土交通省 |
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中継地点を設けて、運転手・ヘッド・貨物を交換する運送方法 | 鉄道や航空、船舶を活用する運送方法 |
中継運送は日帰り運行が可能になるため、ドライバーの労働時間を短縮しつつも物流量を維持することが可能です。 また、モーダルシフトは道路状況に左右されない、より多くの物流を確保できるといったメリットがあります。
デジタルツールの導入
年960時間の上限設定のなかで会社の売上・利益を上げるためには業務の効率化が欠かせません。 業務の効率化には、以下のようなデジタルツールの活用が効果的です。
デジタルツールの種類 | メリット・特徴 |
---|---|
勤怠管理システム |
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配車管理システム |
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トラック予約システム |
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とくに勤怠管理においては、年960時間という上限を厳守する必要があるため、業務効率化だけでなくドライバーの労働時間を正確に把握するツールとしても役に立ちます。
数ある勤怠管理システムのなかでも、勤怠管理・配車管理が簡単にできる運送業専用のクラウドシステム「TUMIX」はおすすめです。
TUMIXは、すでに多くの企業で導入実績があり、なかには月240時間以上も業務時間を削減した会社もあります。シンプルな使い心地で簡単に操作できるため、勤怠管理システムを初めて導入する会社でも安心です。
詳しい内容については、お気軽に相談窓口へお問い合わせください。
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2024年問題における給料の変化まとめ
現時点でもトラックドライバーの低賃金は課題となっており、2024年4月から時間外労働時間の上限規制が適用されると、さらに深刻な状況となることが予想されています。
人手不足や売上の減少を回避するためには、ドライバーの給料を改善することが必須です。荷主に対して運賃交渉を行う、勤怠管理システムなどを活用して業務効率化を図る、といった方法でうまく対処するようにしましょう。