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2024年問題で荷主が受ける影響とその対策

公開日: 2023/09/15

2024年問題で荷主が受ける影響とその対策

この記事でわかること
  • 2024年問題で荷主企業が受ける影響
  • 2024年問題の影響に対してどのように対策すべきか
  • 荷主が実施すべき具体的な対策案

 

2024年問題とは、2024年4月以降、働き方改革関連法案の適用によりトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が設けられることで物流・運送業界に起こるさまざまな問題の総称です。

 

物流業界全体に関わる問題であるため、運送会社だけでなく荷主企業も影響を受けることになります。

 

この記事では、2024年問題で荷主が受ける影響について解説したうえで、その影響に対してどのような対策を講じればいいのかを詳しく説明していきます。

 

2024年問題についてさらに深く知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

 

2024年問題で荷主が受ける影響とは

2024年問題で荷主が受ける影響とは

 

2024年問題により荷主が受ける影響は主に上記4つです。

 

それぞれ見ていきましょう。

 

運賃の値上げ

ドライバーの時間外労働の上限が960時間に規制されると、ドライバー1人あたりの走行距離が減り、運べる荷物が減少してしまいます。運送会社の売上は、従業員の労働力に頼っている「労働集約型産業」であるため、荷物量が減ってしまえば運送会社の売上・利益に悪影響となる事態を避けられません。

 

さらに、2023年4月から中小企業にも適用された、月60時間以上の時間外労働の割増し賃金によって、すでに人件費が上がっている現状です。

 

つまり、時間外労働の制限に加えて人件費の上昇も要因となり、2024年4月以降はさらに物流コストが増加すると考えられます。

 

このような理由から、運送会社は減少する売上・利益をカバーするために運賃を値上げせざるを得ません。運賃上昇は荷主企業にとっても大問題であるため、荷主側の商品やサービスのコストを見直す必要に迫られます。

 

運送条件の制限

時間外労働の制限によって長距離運行は難しくなり、短・中距離運行は荷下ろしできる拠点数が少なくなると予想されます。

 

そのため、依頼を受ける物流量や荷下ろし先までの距離などに制限をかけざるを得なくなり、荷主の依頼によっては断られてしまう可能性もでてくるでしょう。

 

例としては、以下のような依頼は制限されることが予想されます。

 

  • 時間外労働が考慮されれいない距離の運行
  • バラ積み
  • 複数箇所での荷降ろし
  • ドライバーへの積込み作業の委託
  • ドライバーへの荷下ろし作業の委託

 

そのため、荷主側はドライバーの労働時間を考慮した条件を協議し直さなければなりません。

 

また、走行距離の詳しい内容は以下の記事で紹介しています。

 

新たな取引先探しの難航

ドライバーの労働時間が制限されると、今まで取引していた企業とは運送条件が合わなくなるかもしれません。その場合、現状と変わらない物流量を維持するためには、新たな取引先の検討か、運行条件の見直しを行う必要があります。

 

しかし、トラックドライバーはすでに人材不足な状況であり、2024年問題によってさらに不足が加速すると予想されています。今後は運送会社の需要はますます高まり、トラックドライバーの不足も増加していくでしょう。

 

そのため、新たな取引先を見つけ出すことは非常に困難になることが予想されます。既存の運送会社との取引を継続することも選択肢として検討しつつ、自社の運行条件についてもこれまで以上に注視する必要があります。今後は、早い段階から対処法を検討することが荷主に求められてくるでしょう。

 

荷主勧告制度による勧告措置

荷主勧告制度はすでに始まっているものですが、時間外労働の上限適用によって勧告の対象になりやすくなります。

 

そもそも荷主勧告制度とは、運送会社が行政処分等を受ける際に、その行為が主に荷主によって行われた行為なのかを調査し、荷主に起因があると認められた場合に国土交通大臣が荷主に対して適当な措置を行う制度のことです。

 

具体的には、以下のような行為が荷主勧告の対象になります。

  1. 改善が行われない荷待ち時間の恒常的な発生
  2. 荷主の都合による、ドライバーの労働時間を考慮しない到着時刻の設定
  3. 雪や通行止めなどやむを得ない状況であるのにも関わらず、ペナルティを課すこと
  4. 重量違反など、違反となるような依頼を行うこと

 

荷主勧告制度による勧告措置

引用元: 荷主の皆様へ…|国土交通省

 

勧告措置の対象にならないよう、改めてトラックドライバーの労働時間のルールを確認しておくことが重要です。

 

また、年960時間の時間外労働の上限適用と同時期の2024年4月に適用が開始される「新・改善基準告示」にも注意しておきましょう。新しい改善基準告示では、ドライバーの労働時間が以下のように制限されます。

 

区分 制限
時間外労働の上限 960時間
1年の拘束時間 3,300時間(例外:最大3,400時間)
1か月の拘束時間 284時間(例外:最大310時間)
1日の拘束時間 13時間を基本とし最大15時間(例外:16時間)
1日の休息期間 継続11時間を基本とし、継続9時間(例外:8時間)
連続運転時間 4時間以内(最大4時間30分)

 

 

 

2024年問題において荷主が実施すべき対策

2024年問題において荷主が実施すべき対策

 

上記で説明したように、ドライバーの時間外労働が規制されると、荷主企業にもさまざまな問題が発生します。しかし、適切な対策を講じておけば、安定した物流量を確保しやすくなるでしょう。

 

ここからは、荷主が行うべき具体的な対策を4つ紹介していきます。

 

社内における業務効率化

運賃コストの増加は免れません。そのため、社内における無駄なコストを削減し、運賃が増えても問題のない状況を作っておきましょう。

 

業務を効率化し、作業時間を削減する方法が有効です。業務が効率化されれば、生産性の向上と人件費の削減による利益率の上昇が期待できます。さらに、従業員の負担軽減にもなるため、職場改善にもつながり、離職率も低く抑えられるでしょう。

 

業務効率化の具体例は以下のとおりです。

 

  • 倉庫のレイアウトの改善
  • デジタルツールの導入

 

倉庫のレイアウトを見直し改善することによって、ピッキングや棚入れといった工程がしやすくなり、ミスによる追加コストの負担も防げます。

 

運送会社への協力

2024年問題解決には、運送会社と荷主企業がお互いに協力し合うことが不可欠です。

 

具体的には以下のような協力が挙げられます。

 

  • 運送会社から運賃の値上げの交渉があった場合は協議に応じる
  • 業務改善の提案があった場合は必要性や実現性を加味して検討を行う

 

荷主企業から運送会社へ協力を申し出ることも問題解決への大きな一歩です。

 

国土交通省が運送事業者に行った調査によると、荷主から適正な運賃を収受できていないと答えた運送事業者は約7割にまで及んでいます。また、収受できていない理由としては「交渉したが応じてくれない」という回答が最も多く、次いで「言い出せない」という結果でした。

 

この調査からもわかるように、問題解決だけでなく、運送会社との健全な関係性を保つためにも積極的な協力が必要といえます。

 

以下の記事では、2024年問題について、国土交通省などの政府機関が発表・提供している資料をもとにわかりやすく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

 

 

荷待ち・荷役時間の削減に向けた取り組みの実施

荷待ち・荷役時間は、ドライバーが長時間労働を強いられる大きな一因です。これらの時間を削減できれば、その分の時間を運行時間にまわしてもらえるため、安定した物流量の確保が可能になります。

 

主な取り組み例は以下のとおりです。

 

  • トラック予約システムの導入
  • パレットや折り畳みコンテナ等の活用
  • 適正な数のフォークリフトの台数、作業員の配置
  • 納品伝票の電子化
  • 引当作業の効率化・ピッキング導線の見直し等

 

パレットを導入することで、荷物を一度に積み降ろしできるため、荷役時間を減らすことにつながります。また、無駄な待ち時間が発生しないよう、フォークリストの数を適切に調整することも重要です。

 

また、ピッキング迄の導線を短くすることによって、バースの回転率を上げ、荷待ち時間の削減を図ることも可能です。

 

運送契約の適正化を図る

荷主勧告制度や法律違反とならないためにも、運送契約の適正化を図る必要があります。

 

具体的には、以下のポイントに注意して契約を結ぶようにしましょう。

 

  • 運送契約は書面化またはメール等の電磁的方法を用いる
  • 運送契約に含まれていない業務はさせない
  • 運送契約に含まれていない作業をさせる場合は別途で料金を支払う
  • 燃料価格上昇分の運賃の値上げ交渉があった際は協議に応じる
  • 運送会社に対し、下請けに出す場合には上記4つを対応するように求める
  • 高速道路の利用料金の負担に関して相談が合った場合は協議に応じる

 

燃料費の価格上昇による運賃の値上げを求められたのにもかかわらず、応じなかった場合は法律違反となる恐れや勧告の対象となるため注意が必要です。

 

また、ドライバーの負担を削減するため、積極的に高速道路を使用するようにしなければなりません。運送会社から高速代の負担を相談された場合は必ず協議に応じるようにしてください。

 

支援制度の活用

2024年問題への対策には、コストもかかります。なかには「対策が必要なことは分かっているものの、コストがかかるため実施が難しい」という企業もあるでしょう。

 

そこで、国は物流総合効率化法に基づいた物流効率化への取り組みを支援しています。条件に当てはまれば、対応コストを大幅に削減することが可能です。

 

例えば、以下のような支援を受けられます。

 

  • 総合効率化計画の認定を受けた営業倉庫に対する、法人税等の割増償却や固定資産税・都市計画税の減免
  • モーダルシフト等の運行経費の一部補助
  • 市街化調整区域に倉庫等を建設する場合の開発許可の配慮
  • 中小企業の保険料率の引き下げ

 

このような制度を活用するには、あらかじめ申請手続きを行い、認定を受ける必要があります。各都道府県に相談窓口が設置されているので、詳しい申請内容については直接問い合わせるようにしてください。

 

2024年問題における荷主の対策まとめ

2024年問題では、運送会社はもちろん、荷主企業にも大きな影響を与えます。時間外労働の上限制限によって荷主が受ける影響は、主に以下の4つです。

 

  • 運賃の値上
  • 運送条件の制限
  • 新たな取引先の選定
  • 荷主勧告制度による措置

 

ドライバーの時間外労働が規制されると、安定した物流量を確保するのが厳しくなります。そのため、会社の売上・利益を維持するためには以下のような取り組みで対処するようにしましょう。

 

  • 社内の業務効率化
  • 運送会社への強力
  • 荷待ちや荷役時間の削減
  • 契約の適正化
  • 支援制度の活用

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