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運送業界では働き方改革が喫緊の課題|必要な取り組みや事例を紹介

公開日: 2024/10/01

運送業界では働き方改革が喫緊の課題|必要な取り組みや事例を紹介

2024年4月に労働時間の規制が強化され、慢性的な長時間労働や人材不足が問題視されてきた運送業界でも、働き方改革への対応が求められています。国民生活や経済活動に不可欠な基盤産業である運送業界にとって、持続可能な物流を実現させるための取り組みは喫緊の課題です。労働時間の削減のみならず、生産性の向上や経営改善、人材確保・育成環境の整備など、包括的な施策を講じる必要があるでしょう。

 

本記事では、運送業界が直面している働き方改革の必要性と具体的な取り組みを解説します。実際に働き方改革による成果を得た運送会社の事例も紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。

 

この記事でわかること
なぜ運送業界では働き方改革が推進されているのか
運送業界では働き方改革でどのような取り組みを行うべきか
働き方改革の実施が難しい場合の対処法
 

運送業界が働き方改革を推進しなければならない理由

労働時間や休息期間に関する働き方の規制は、2024年4月の働き方改革関連法の追加および、附帯決議により見直された改善基準告示に基づいて施行されました。運送業界においては、長時間労働が慢性化しているドライバーの労働環境の改善が目的の一つです。

 

しかし、この動きによってドライバーの負担は軽減されたものの、以前から問題視されていた運送業界の労働力不足はさらに深刻化しています。例えば、働き方改革関連法でドライバーの時間外労働は年間960時間までと上限が規定されました。結果として、次のような問題を引き起こしています。

  • 1日に運べる荷物の量が減少

  • 運送会社の売上・利益が減少
  • 時間外労働を前提としていたドライバーの収入が減少
  • 収入減少により新たな人材確保が困難に

これらは「2024年問題」と呼ばれ、今運送業界全体が直面している課題です。

 

とくにトラック輸送は、人々の生活や経済活動に欠かせない基盤産業にあたります。輸送能力を維持し、企業の経営を継続させるには、生産性の向上とともに新たな労働力の確保も必須です。適切な対策を講じなかった場合、2030年には輸送能力が約34.1%不足すると予測されています。

 

このため、ドライバーは中高年層の男性が中心ですが、労働力不足の解消に向けて、女性をはじめ若年層や60歳以上の方、外国人など多様な人材を受け入れる必要があるでしょう。

 

一方で、人材の確保を進めるには、トラックドライバーという職業に対して世間が抱く「大変そう」「つらそう」といったイメージ自体を根本から変えなければなりません。そのためにも、慢性的な長時間労働の解消をはじめとした働き方の改革を推し進める必要があるのです。

 

(※1)出典元:知っていますか?物流の2024年問題|全日本トラック協会
(※2)出典元:労働力調査|政府統計総合窓口

 

>>運送業界はなぜ人手不足なのか?問題点や解決策を紹介

 

運送業界が取り組むべき働き方改革

運送業界における働き方改革では、労働時間の削減のみではなく、業界全体の持続可能性を高めるための、より包括的な取り組みが求められます。

 

2017年8月に政府は、自動車運送業を対象とした「トラック・バス・タクシーの働き方改革」を取りまとめました。それに伴い、運送業界でも主体的に働き方改革を推進するべく、全日本トラック協会が「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプランについて」を策定しています。

 

これらの施策やプランをもとに、働き方改革を進めるうえで運送業界が向き合う必要のある4つの取り組みを見てみましょう。

 

生産性の向上

 

限られた人材を有効活用し、ドライバーの負担を軽減するためには、一人のドライバーあたりの生産性を向上させることが重要です。例えば、荷待ちや荷役にかかる時間の削減は、業務の効率化に大きく貢献するでしょう。

 

生産性の向上に役立つ具体的な取り組みとして、以下のような内容が挙げられます。

  • 荷役のパレット化

  • 省力・アシスト機器の活用
  • ITを活用した予約受付システムの導入

また、 中継輸送やモーダルシフトの推進、 高速道路の効果的な活用など、輸送方法の見直しによっても輸送能力の維持・向上が期待できます。ただし、取り組みの多くは、荷主による理解と良好な関係の構築が前提となることを念頭に置いておきましょう。

 

経営改善

 

ドライバー不足を招いている背景の一つにあるのは、業務負担に対する賃金の低さ、休暇の取りにくさ、といった処遇の問題です。ドライバーにとって働きやすい環境を整えるには、賃金の引き上げや人事評価制度の見直し、週休2日制の導入、有給休暇の取得促進などの施策が必要になります。

 

以下のような処遇改善を実現するうえで経営基盤の強化も欠かせません。

  • 給与体系の見直しを反映した原価計算

  • 運賃や付帯業務の料金見直し
  • 労働時間や休息期間の厳格な管理

労働時間や休憩・休暇の複雑な管理を行うには、「TUMIXコンプラ」のような改善基準告示に対応したツールの導入が効果的です。専用ツールを活用した効率的かつ正確な労務管理で、法令遵守と安定した経営の両立を目指しましょう。

 

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適正取引の推進

 

ドライバーの低賃金が問題視されている一つの要因に、元請け企業と下請け企業のあいだで適切に原価が定められていないことが挙げられます。また、下請けの運送業者は、より多く利益を得るために人件費を削減するケースも珍しくありません。

 

他業界と同程度の年収をドライバーに担保するため、まず必要になるのは適切な原価設定です。それと同時に、税金や法定福利費などを考慮した原価計算の実施、原価計算スキルの向上が各業者で求められます。

 

また、取り決めた内容は必ず書面化し、適正な取引環境の整備とドライバーの処遇改善に役立てましょう。

 

人材の確保・育成

 

上記でも触れたとおり、ドライバー不足を解消するには、年齢や性別に関係なく多様な人材が働ける環境を整えることが重要です。具体的には、次のような取り組みが考えられます。

  • 女性専用のトイレや更衣室の設置

  • 育休制度の導入や子育て支援の環境整備
  • 女性や高齢者も働きやすい地場運行と短時間シフトの導入
  • 若年層の人材獲得に向けた賃金水準の改善、休暇日の増加、有給休暇取得の推進
  • スキルアップを支援する教育制度の整備
  • キャリアアップを可能にする人事制度の導入

処遇が良く柔軟な働き方ができる職場は、性別を問わず幅広い年齢層の人材から魅力的に映るとともに、長期的なキャリア形成も見据えやすくなります。

 

運送業界における働き方改革の事例

実際に、運送業界における働き方改革の取り組み事例を見てみましょう。ここでは、TUMIXの導入により労働時間の厳格化と管理業務の効率化に成功した事例をご紹介します。

 

愛知県安城市を本拠地とする株式会社サンワでは、2024年問題への対応策としてTUMIXコンプラを導入しました。TUMIXコンプラは、デジタルタコグラフと連携してデータを取り込み、改善基準告示に基づいた労働管理を行うためのツールです。

 

タイムカードの手入力や転記、勤務時間算出などこれまで時間がかかっていたアナログでの事務工数を、デジタル化によって一気に削減できたといいます。なかでも使い勝手の良さを感じたのが、改善基準告示のダッシュボードや残業平準化支援グラフの機能です。ドライバーごとの勤務状況を定期的にチェックでき、超過時間が発生すると色分け表示されます。

 

ツールの導入によって、労働管理の厳格化と管理業務の効率化を同時に実現できた事例です。

 

 

2024年問題に向けてDXで効率化を目指す

 

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働き方改革の取り組みを支援する制度

働き方改革に向けた取り組みには、人件費や採用費、IT関連導入費などのさまざまなコストがかかります。よって、働き方改革を進めたいものの、資金面で実施が難しいと感じている運送会社も少なくないでしょう。

 

資金面の負担をできる限り抑えるには、働き方改革に関わる補助金・助成金を活用するという選択肢があります。例えば「働き方改革推進支援助成金」は、労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進を図る中小企業の事業主に対して、取り組みにかかる費用の一部を国が補助する制度です。

 

国による支援制度以外に、自治体や各都道府県の全日本トラック協会が提供する補助金・助成金を利用できる場合もあります。状況に応じた制度を活用すれば、コストを抑えながら働き方改革を推進することが可能です。

 

まとめ

運送業界が将来の担い手を確保するためにも、働き方改革への対応は避けて通れない喫緊の課題です。ドライバーの処遇の見直しをはじめ、生産性の向上、経営改善、適正取引の推進、人材の確保・育成といった包括的な取り組みが求められます。実際に成果を上げた働き方改革の事例を参考に、デジタル化による業務効率化や新卒採用に合わせた労働環境の整備、労務管理システムの導入なども視野に入れてみましょう。

 

ただし、これらの施策を講じるにはある程度のコストが必要になります。資金面の負担が懸念材料となっている場合は、国や自治体、業界団体が提供する補助金・助成金制度の活用も検討してみてください。

 

自社の課題や状況に合わせた働き方改革を推進し、幅広い人材が働きやすい環境を整えるとともに、2024年問題対策を図りましょう。

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