公開日: 2024/10/22
【運行管理】ドライバーの1日の拘束時間の上限を超えた場合の罰則と労働時間を抑えるポイント
2024年4月の改善基準告示の改正により、ドライバーの1日の拘束時間に関わるルールが変更されました。
改正後の1日の拘束時間は原則13時間、最大拘束時間は15時間となっています。ただし例外として、宿泊を伴う長距離輸送の場合のみ、週に2回まで、最大16時間まで拘束することが可能です。
では、1日の拘束時間の上限を超えた場合、運送事業者、運行管理者、ドライバー、そして荷主にはどのような罰則や影響があるのでしょうか。
本記事では、ドライバーの1日の拘束時間の基準や上限、拘束時間の上限を超えた場合の罰則や影響、そして拘束時間の上限を超えないためにできる対策について詳しく解説します。
ドライバーの1日の拘束時間の基準や上限
1日の拘束時間の上限を超えた場合の罰則や影響
1日の拘束時間の上限を超えないためにできる対策
1日の拘束時間の上限を超えるとどうなる?
ドライバーの1日の拘束時間の上限を超えた場合の罰則と影響について解説します。まずは「1日の拘束時間の上限」の基準についておさらいしましょう。
改善基準告示の改正前も改正後も、ドライバーの1日の拘束時間は13時間以内を基本としていることに変わりはありません。変更されたのは、延長する場合の上限時間です。
具体的には、以下のような点が変更されました。
改正前 | 改正後 | |
基本の拘束時間 | 13時間以内 | 13時間以内 |
上限の拘束時間 | 16時間 | 15時間 |
上限時間を超える1週間あたりの限度 | 15時間を超えるのは1週間につき2回 | 14時間を超えるのは1週間につき2回 |
例外 | ‐ | 16時間 ※宿泊を伴う長距離貨物運送に限り、1週間につき2回まで |
出典元:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省
改正後は、運行や業務状況の影響で基本の拘束時間に抑えられないケースでも、最大15時間までしか延長できません。
ただし、以下いずれも該当するケースでは、週2回までであれば最大拘束時間を16時間とすることができます。
- ドライバーの1週間における運行すべての輸送距離が450km以上
- 休息期間が住所地以外の場所である
このように、「1日の拘束時間16時間」というのは、宿泊を伴う長距離輸送の場合に限って適用できる上限です。この基準を守らなければ、改善基準告示に違反したことになります。
それでは、具体的にどのような罰則があるのか、また罰則以外の影響について詳しく見ていきましょう。
運送事業者への罰則・影響
改善基準告示は法律ではないため、違反に対する罰則は定められていません。しかし、違反が認められた場合、労働基準監督署からの指導が行われるほか、重大な違反の疑いあると認められた場合は行政処分を受けることもあります。
また、国土交通省の自動車総合安全情報では、過去3年分の運送事業者に対する行政処分の履歴を公表しています。この情報は一般に公開されるため、取引先や新規顧客の獲得に影響を及ぼす可能性があるのです。
さらに、悪質な場合はニュースなどで公表される可能性もあります。そうなると、世間からは労働基準監督署からの指導や国土交通省による行政処分を受けた業者として認識されてしまうかもしれません。
その結果、ブラック企業というイメージが定着し、人材獲得が難しくなるなど、事業運営にも大きな影響を与える可能性があります。
運行管理者への罰則
1日の拘束時間の上限を超えてドライバーを働かせても、必ずしも運行管理者に罰則が科せられるわけではありません。しかし、運行管理者は運行の安全を確保する役割があり、その最低限の資質として、法令を遵守する能力が必要とされています。
そのため、運行管理者が以下のような行いをすれば、運行管理者資格者証の返納命令を受けることになります。
- 運行管理者がドライバーに過労運転などの違反行為を命じている
- 違反行為を隠ぺい・改ざんしたりする行為が繰り返し、または悪質に行われている
ドライバーへの罰則・影響
改善基準告示違反によるドライバー個人への直接的な罰則はありません。しかし、1日の拘束時間を超える状態が続けば、ドライバーの健康に深刻な影響が出る恐れがあります。
長時間労働になるほど健康障害のリスクは高まるとされており(※1)、最悪の場合は命に関わる事態にまで発展する危険があるのです。
実際、トラックドライバーの長時間労働は社会問題として認識されています。労災(脳・心臓疾患)の請求件数・死亡件数ともに最も多い業種が道路貨物運送業となっています(※2)。
ドライバーの健康を守るためにも、改善基準告示に従った労働環境を整えましょう。
(※1)出典元:過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ|厚生労働省
(※2)出典元:過労死等の労災補償状況
荷主への罰則・影響
改善基準告示の違反に、荷主の主体的な関与が認められた場合、荷主に対しても罰則が科せられるケースがあります。例えば、荷主が労働時間などのルールを無視して指示を行うと、罰則として荷主名と事案の概要が公表されてしまいます(荷主勧告制度)。
荷主名や違反の詳細が公表されれば、その会社の評価が下がったり、依頼を断る運送事業者が出てきたりするかもしれません。
こうした事態は、荷主企業の経営に大きな影響を与える可能性があります。そのため、荷主側もドライバーの労働時間のルールを十分に把握しておきましょう。
1日の拘束時間の上限を超えないために
ドライバーの1日の拘束時間の上限を超えないためには、安全運行と健康管理の観点から非常に重要です。ここでは、運送事業者、運行管理者、ドライバー、荷主がそれぞれできる対策について詳しく見ていきましょう。
運送事業者ができること
運送事業者は、ドライバーの1日の拘束時間の上限を超えないような労働環境を整える責任があります。具体的には以下のような取り組みが考えられます。
-
ドライバーや運行管理者から、労働時間が長くなる理由を聞いて改善に取り組む
- 定期的な社内会議などを設けて、現場の意見を聞く機会をつくる
- 荷主への働きかけ
荷待ちや荷受けなど、発荷主・着荷主が理由でドライバーの1日の拘束時間が長くなってしまうケースもあるため、荷主の協力も必要不可欠です。
また、ドライバーが1日の拘束時間を守れるように、厳格な勤怠管理も求められます。TUMIXは運送業に特化したクラウドシステムで、改善基準告示に対応した勤怠管理が可能です。ぜひ導入をご検討ください。
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運行管理者ができること
運行管理者ができることは、ドライバーの1日の拘束時間の上限を超えないように運行計画を立てることです。
具体的には、交通規制や渋滞による速度低下、荷待ち時間や付帯作業の時間などを十分に見込んだ計画を立てる必要があります。また、毎回同じような形式的な点呼を取るのではなく、ドライバーとのコミュニケーションをしっかり取ることも大切です。
ドライバーが無理なく働けているかを確認し、個々のドライバーの適性などに応じてシフトや運行計画を調整することが求められます。
ドライバーができること
ドライバー自身でできることは、業務のミスを減らしたり、業務の効率化を意識したりすることです。
確かに、ドライバー自身で拘束時間を大幅にカットするのは難しいかもしれません。しかし、会社に改善を求める際に具体的な施策を提案できるよう、日々の業務で問題となる事項を把握する必要があります。
労働環境を改善するためには、現場で働いている人の声を参考に、何が無駄になっているかを明らかにすることが有効です。そのため、ドライバーは日々の業務の中で、改善できる部分がないかを常に意識しながら業務にあたりましょう。
荷主ができること
ドライバーの1日の拘束時間の上限を超えないようにするためには、荷主の協力が欠かせません。荷主ができる具体的な取り組みには、以下のようなものがあります。
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予約受付システムの導入:荷待ち時間の削減が期待できます。
- パレットの導入:積み込み・荷受け・荷待ち時間の削減につながります。
- 発送量の平準化:特定の日時に荷物が集中することを避け、効率的な配送を可能にします。
- 検品の効率化・検品水準の適正化:荷待ち時間の削減につながります。
まとめ
改善基準告示の改正により、ドライバーの拘束時間に関わるルールが変更されました。違反した場合は、運送事業者、運行管理者、ドライバー、そして荷主にまで影響を及ぼす可能性があります。
この課題に対処するためには、運送事業者による労務管理、運行管理者による運行計画の立案、ドライバー自身の業務効率化への取り組み、そして荷主の協力が不可欠です。
TUMIXの運送業に特化したシステムは、効率的な労務管理を実現し、拘束時間の管理に大きく貢献します。是非お気軽にお問い合わせください。