公開日: 2023/11/10
IT点呼の条件とは?認定の種類ごとに詳しく解説
- 認定の種類ごとのIT点呼を利用するための条件
- 優良認定の取得条件
- Gマーク認定の取得条件
IT点呼とは、自動車運送事業において運行の安全確保を目的とした点呼業務を、IT機器を用いて遠隔で行うことです。
IT点呼は、対面点呼のように事業所ごとに人員を配置する必要がないため、人員削減や労働時間の改善などのメリットがあります。
ただし、無条件で誰でも利用できるわけではなく、利用には一定の条件を満たなくてはなりません。また、受けている認定の種類によっても条件が異なります。
本記事では、IT点呼の導入を検討している事業者の方に向けて、認定の種類ごとにIT点呼の利用条件をわかりやすく解説します。
IT点呼の条件は認定の種類によって異なる
IT点呼を利用するためには、「優良認定」「Gマーク認定」のうち、いずれかの認定を受ける必要があります。どちらの認定を受けるかによって、IT点呼の実施可能範囲や連続可能時間が異なります。
ここからは、2種類の認定の違いを紹介したうえで、どちらの認定を受けるべきなのかを確認していきましょう。
認定は「優良認定」「Gマーク認定」の2種類
IT点呼を実施するためには、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 「優良認定」を受けた旅客自動車運送事業者の営業所
- 「Gマーク認定」を受けた営業所
「優良認定」とは、Gマーク認定を受けていない営業所が、一定の条件を満たすことで取得できる認定のことです。規制が緩和されたことにより、優良認定を受ければ、Gマークを取得しなくてもIT点呼が導入できるようになりました。
「Gマーク認定」とは、3テーマ38項目の評価基準をクリアし「安全性優良事業所」の認定を受けることで取得できるマークのことです。なおGマーク認定は、営業所ごとに取得しなければなりません。
<取得条件>
|
|
どちらの認定を受けるべき?
優良認定は、Gマーク認定よりも取得が簡単な点がメリットです。
一方でGマーク認定は取得難度が高いものの、IT点呼の導入だけではなく、会社の信頼性向上や保険料の削減などさまざまなメリットがあります。
このように、優良認定とGマーク取得にはそれぞれ異なるメリットがあるため、自社の事情に合うものを選ぶようにしましょう。まずは簡単に取得できる優良認定を取得し、将来的なGマーク取得を目指すのも選択肢の一つです。
また、Gマークを認定しているほうがIT点呼の実施可能範囲が広いことも特徴です。
優良認定 |
|
24時間実施可能 |
---|---|---|
Gマーク認定 |
|
24時間実施可能 連続16時間まで 連続16時間まで |
IT点呼の条件詳細
ここからは、IT点呼をおこなうために必要な優良認定の取得条件と、Gマーク認定の取得条件を、それぞれ詳細に見ていきましょう。
優良認定の取得条件
優良認定の取得条件には以下の4つの条件があります。Gマーク認定の取得条件と比較すると満たしやすいため、将来的なGマーク認定取得を見据えつつ、優良認定の取得を目指しても良いでしょう。
- 営業所を開設してから3年が経過していること
- 過去3年間で、第1当事者となる重大事故を発生させていないこと
- 過去3年間で、点呼に係る行政処分等を受けていないこと
- 適正化実施機関の直近の巡回指導評価がD・E以外かつ点呼に関する指摘が無く、点呼に係る改善報告書を3ヵ月以内に提出し、改善を図っていること
1.営業所を開設してから3年が経過していること
優良認定を取得するためには、営業所の開設、すなわち認可を取得してから3年が経過していなければなりません。例えば、2020年4月1日に認可を取得した場合は、2023年4月1日が「3年が経過した日」となります。
参考までに、2019年11月の法改正により、営業所新設の申請から認可取得の期間は、それまでの1~2か月から「2~3ヶ月」となりました。
2.過去3年間で、第1当事者となる重大事故を発生させていないこと
条件の2つ目は、過去3年間で、第1当事者となる重大事故を発生させていないことです。第1当事者となる重大事故の定義としては、警察庁が以下のように解説しています。
「第1当事者」とは、最初に交通事故に関与した車両等(列車を含む。)の運転者又は歩行者のうち、当該交通事故における過失が重い者をいい、また過失が同程度の場合には人身損傷程度が軽い者をいう。
「最初に交通事故に関与した車両」を具体例としては、「トラックが車線をはみ出したために、反対車線の車に衝突してしまった」などのケースが挙げられます。
3.過去3年間で、点呼に係る行政処分等を受けていないこと
条件の3つ目は、過去3年間で、点呼に係る行政処分等を受けていないことです。
点呼に係る行政処分には下記の表のようなものがあります。
点呼の実施違反 |
■未実施:
■不適切:
|
点呼の記録違反 |
■一部、またはすべての記録・保存が無い ■記載事項等の不備 ■記録の改ざんや不実記載 |
4.適正化実施機関の直近の巡回指導評価がD・E以外かつ点呼に関する指摘が無い、または点呼に係る改善報告書を3ヵ月以内に提出し、改善を図っていること
条件の4つ目は、適正化実施機関の直近の巡回指導評価がD・E以外かつ点呼に関する指摘が無く、点呼に係る改善報告書を3ヵ月以内に提出し、改善を図っていることです。
巡回指導とは、貨物事業者運送の許可を受けた事業者が法令に基づいた業務を遂行しているかを、適正化実施機関が定期的に訪問して指導等を行う取り組みのことです。
チェックされる指導項目は38項目あり、それぞれA~Eの5段階で評価されます。
その評価がD・E以外で、なおかつ点呼に関する指摘がないこと、また指摘が合った場合でも、改善報告書を3ヵ月以内に提出し改善を図っていることが条件です。
下表は、巡回指導におけるチェック項目の一例です。
事業計画等 | 主たる事務所および営業所の名称、位置等に変更はないか |
帳簿類の整備、報告等 | 事故記録が適正に記録・保存されているか |
運行管理等 | 点呼の実施とその記録・保存が適正にされているか |
車両管理等 | 整備管理規定が定められているか |
労基法等 | 就業規則の制定や36協定が締結され、届出しているか |
法定福利 | 労災保険、雇用保険等に加入しているか |
運輸安全マネジメント | 運輸安全マネジメントが適正か |
Gマーク認定の取得条件
Gマーク認定の取得条件には以下の4つの条件があります。優良認定を取得する場合と比べると条件は厳しく設定されています。
- 申請資格を満たしていること
- 評価基準を満たしていること
- 法に基づいた認可申請・届出・報告事項を行っていること
- 社会保険等へ適正に加入していること
それぞれの項目について、詳しく解説していきます。
申請資格を満たしていること
Gマーク認定の取得条件の1つ目は、申請資格を満たしていることです。
申請資格は全部で4つあり、うち2つは全申請者が対象、もう2つは過去にGマーク認定の申請の却下や取り消し処分を受けたもののみが対象となります。
つまり、Gマーク認定の申請の却下取り消し処分を受けていなければ申請資格は2つのみです。申請あるいは認定を受けて取り消し処分を受けたものは下記表の「■取消しを受けた申請者」の条件を満たさなければなりません。
<すべての申請者>
|
<取消しを受けた申請者>
|
評価基準を満たしていること
Gマーク認定の取得条件の2つ目は、評価基準を満たしていることです。評価基準とは、事業の遂行に対する評価項目を満たしているかどうかをチェックすることを言います。
3テーマ38項目あり、100点満点中、各テーマの基準点数を満たしたうえで合計80点以上の得点を得る必要があります。
各テーマと配点及び基準点については下記の表を参考にしてください。
安全性に対する法令の遵守状況 | 配点40点・基準点数32点 |
事故や違反の状況 | 配点40点・基準点数21点 |
安全性に対する取組の積極性 | 配点20点・基準点数12点 |
法に基づいた認可申請・届出・報告事項を行っていること
Gマーク認定の取得条件の3つ目は、法に基づいた認可申請・届出・報告事項を行っていることです。下表に挙げた9つのチェック項目を全て満たさなければなりません。
- 主たる活動拠点である事業所および営業所の名称・位置に変更がない
- 営業所に配置している事業用自動車の種別および数に変更がない
- 車庫の位置および収容能力に変更がない
- ドライバーの休憩・睡眠施設の位置や収容能力に変更がない
- 届出事項に変更がない
- 自動車事故報告書を提出している
- 事業報告書・事業実績報告書を提出している
- 運行管理者の選任等に関する内容を届出している
- 整備管理者の選任等に関する内容を届出している
社会保険等へ適正に加入していること
Gマーク認定の取得条件の4つ目は、社会保険等へ適正に加入していることです。下記の表にて要件を示しましたが、2項目の9事項すべてを満たす必要があります。
前述した3つ目の取得条件と同様に、一つでもチェック項目から漏れると認定されません。
労災保険・雇用保険への加入状況 |
|
労災保険・雇用保険への加入状況 |
|
IT点呼の条件まとめ
IT点呼の導入条件である2つの認定と、それぞれの認定の取得条件を解説しました。
自動車運送事業では、長時間労働や時間外労働の増加が課題となっています。IT点呼を上手く活用し、生産性を高めることができれば、労働環境の改善につながります。
IT点呼と合わせて活用できる運送業専用勤怠管理ツールとして、株式会社TUMIXが提供している「TUMIXコンプラ」をご紹介します。
- 労働時間の集計は手間と時間がかかる
- 出勤簿の集計は必然的に月末に行う
- 乗務員の労働時間を意識した配車ができない
「TUMIXコンプラ」は、運送業の現場で発生している上記の問題を解決に向けた、効果的で使い勝手の良いツールとなっています。現場での生産性を高めるためにも、ぜひ検討されてはいかがでしょうか。
\運送業専用のクラウド勤怠システム!/