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IT点呼とは|導入の背景や対象、メリットなど詳しく解説

公開日: 2023/11/03

IT点呼とは|導入の背景や対象、メリットなど詳しく解説

■この記事でわかること
  • IT点呼とは何か
  • IT点呼導入のメリット
  • IT点呼の導入手順
  • IT点呼の導入費用・期間
  • IT点呼導入に使える助成金制度

 

運送における点呼は、安全な運行を目的に法律で定められた義務です。これまでは原則対面で行う必要がありましたが、改善基準告示や働き方改革関連法によって、より効率的な業務を目的にIT点呼を採用する事業者が増えてきました。

 

しかし、IT点呼の導入には申請条件や申請をするための準備があるため、何から実施したら良いのか分からない事業者もいるかもしれません。

 

ここではIT点呼の導入を検討中の事業者の方に向けて、IT点呼の導入条件やメリット、導入までの流れを紹介します。

 

IT点呼とは

it点呼

IT点呼とは、IT機器を用いて遠隔で実施する点呼です。

 

もともと、運行の安全確保を目的とした点呼は、原則として対面での実施が法律で義務付けられていました。しかし近年、トラックドライバーの長時間労働が問題視されるようになったことで、点呼の際の負担軽減も考えられるようになりました。

 

こうした流れもあり、2007年から、優良と認められる事業所や営業所は、IT技術を活用したIT点呼の導入が可能となりました。

 

ここでは、従来の点呼との違いや、IT点呼の普及が進んでいる背景、遠隔点呼との違いといった概要を紹介します。

 

IT点呼と従来の点呼の違い

 

従来の点呼とIT点呼の主な違いは、点呼を対面で行うか、遠隔で行うかという点です。

 

従来の点呼は、乗務前と乗務後に対面で行うことが義務付けられていました。長距離運行などで中間日に対面点呼ができないときに限り、電話等による点呼(中間点呼)が特例として認められていました。

 

一方、IT点呼は、一定の要件を満たすことで、乗務前や乗務後の点呼についても遠隔で行うことが可能となり、柔軟な運用が可能です。

 

IT点呼・遠隔点呼・自動点呼の違い

 

IT点呼には、「優良認定」を受けて実施できるものと、「Gマーク認定」を受けて実施できるもの2種類があります。

 

また、IT点呼に似た点この方法として、「遠隔点呼」と「業務前自動点呼・業務後自動点呼機器」があります。

 

「遠隔点呼」は、これまで優良認定あるいはGマーク認定を受けた事業者のみ認められていたIT点呼をさらに発展させ、より多くの事業者が導入できるようにした仕組みです。IT点呼よりも導入条件が緩和されています。

 

「業務前自動点呼・業務後自動点呼機器」は、ロボット等の点呼支援機器によって業務前および業務後の点呼を代替する仕組みです。ただし、アルコールチェックに反応した場合などの非常時には、運行管理者が必要な措置を講じられる体制を整えておく必要があります。

 

それぞれの導入条件・要件、実施可能範囲について、下表にまとめました。

 

  IT点呼(優良認定) IT点呼(Gマーク認定) 遠隔点呼 業務前自動点呼・業務後自動点呼機器
条件・要件

・営業所を開設してから3年が経過していること

・過去3年間で、自らの責に帰する重大事故を発生させていないこと

・過去3年間で、点呼に係る行政処分等を受けていないこと

・適正化実施機関による巡回指導の評価が 直近でD・E以外かつ点呼に関する指摘が無い、または点呼に係る

・改善報告書を3ヵ月以内に提出し、改善を図っていること

・申請資格を満たしていること

・評価基準をクリアしていること

・認可申請・届出・報告事項を法に基づいて行っていること

・社会保険等へ適正に加入していること

・定められた機器・システムを使用すること

・遠隔点呼の実施場所や施設、環境要件を満たしていること

・運用上の厳守事項を守ること

・申請資格を満たしていること

・定められた機器・システムを使用すること

・定められた施設・環境要件を満たしていること

・運用上の厳守事項を守ることなど(業務前か業務後かで要件は異なる)

点呼の実施可能範囲 ・A営業所~A営業所の車庫

・A営業所~A営業所の車庫

・A営業所の車庫~A営業所の他の車庫

・A営業所~B営業所

・A営業所~B営業所の車庫

※異なる営業所・車庫間の場合は、どちらもGマークを取得していることが条件

■運行管理者等が属する自社営業所または車庫間の実施

▽例

・A営業所~A営業所の車庫

・A営業所の車庫~A営業所の他の車庫

・A営業所~B営業所

・A営業所~B営業所の車庫

・A営業所の車庫~B営業所の車庫

・営業所~完全子会社等の営業所

・営業所~完全子会社等の車庫

・営業所の車庫~完全子会社等の営業所

・営業所の車庫~完全子会社等の車庫

■事業者を跨いだ実施

▽例

・自社営業所~他社営業所

・当該事業所または車庫

 

遠隔点呼は、IT点呼では行えなかった、営業所から完全子会社の車庫や営業所への点呼、営業所の車庫から完全子会社の車庫、同じ種別の他社営業所等への点呼が可能です。

 

ただし、IT点呼の要件であるGマークの取得には、信頼性の向上や保険料の削減など、IT点呼以外にもさまざまなメリットがあります。

 

そのため、Gマークの取得については、IT点呼以外のメリットも考慮したうえで取得を検討しましょう。

 

IT点呼と遠隔点呼の違いをわかりやすく解説>>

 

また、自動点呼はあくまで点呼の自動化であり、IT点呼や遠隔点呼のように遠隔地からの点呼は認められていません。

 

IT点呼の導入条件

IT点呼はどの運送事業所も行えるわけではありません。優良認定された旅客自動車運送事業者の営業所、Gマーク認定の営業所のみが許可されています。

 

それぞれの認定条件については以下の通りです。

 

   優良認定 Gマーク認定
条件

・営業所を開設してから3年が経過していること

・過去3年間で、自らの責に帰する重大事故を発生させていないこと

・過去3年間で、点呼に係る行政処分等を受けていないこと

・適正化実施機関による巡回指導の評価が直近でD・E以外かつ点呼に関する指摘が無い、または点呼に係る改善報告書を3ヵ月以内に提出し、改善を図っていること

・申請資格を満たしていること

・評価基準をクリアしていること

・認可申請・届出・報告事項を法に基づいて行っていること

・社会保険等へ適正に加入していること

 

 Gマークは、貨物自動車運送事業において「安全性優良事業所」の認定を受けることで取得できます。認定を受けるためには、3テーマ38項目の評価基準をクリアしなければなりません。Gマークを取得することでIT点呼の利用が可能です。

 

Gマークについては、下記の記事でも詳しく紹介しているため、こちらも参考にしてください。

 

IT点呼の条件とは?認定の種類ごとに詳しく解説>>

 

IT点呼運用時のルール

ここでは、IT点呼のルールを理解するうえで重要なポイントを以下の3点に分けて解説します。

  • 実施可能範囲
  • 1営業日のうち連続する16時間以内に実施する
  • 1/3以上は運行管理者が執行する

それぞれ見ていきましょう。

 

実施可能範囲

 

  優良認定 Gマーク認定
点呼の実施可能範囲 ・A営業所~A営業所の車庫

・A営業所~A営業所の車庫

・A営業所の車庫~A営業所の他の車庫

・A営業所~B営業所

・A営業所~B営業所の車庫

 

 優良認定の営業所とGマーク認定の営業所では、IT点呼の実施可能範囲が異なります。

 

Gマーク認定の営業所は、Gマークの取得によって安全性の高い営業所であることが認められるため、優良認定の営業所よりもIT点呼の実施可能範囲が広くなります

 

また、A営業所からB営業所、A営業所からB営業所の車庫というように、異なる営業所・車庫間でIT点呼を実施するには、どちらもGマークを取得している必要があります。例えば、A営業所がGマークを取得していても、B営業所でGマークを取得していなければ、A営業所とB営業所間でIT点呼を実施することはできません。

 

1営業日のうち連続する16時間以内に実施する

 

Gマーク認定で認められている異なる営業所や車庫間でのIT点呼は、1営業日のうち連続する16時間以内での実施に限られています。例えば、6時からIT点呼を開始した場合、22時までがIT点呼可能な範囲です。

 

また、途中まで対面点呼を行い、その後16時間以内でIT点呼を続けることも可能です。ただし、途中で対面点呼を挟み、合計時間を16時間以内にする運用は認められていません。

 

A営業所からA車庫といったように、同じ営業所や車庫内で行うIT点呼には、この16時間制限は適用されません。

 

1/3以上は運行管理者が執行する

 

IT点呼であっても対面点呼であっても、点呼を行う人の条件は同じです。点呼は、運行管理者または運行管理補助者のいずれかが行いますが、1ヶ月間に実施する点呼のうち、少なくとも3分の1は運行管理者が直接行う必要があります

 

さらに、ほかの営業所でIT点呼を実施した場合は、その点呼記録内容を翌営業日までに、当該車両が所属する営業所の運行管理者または補助者へ報告しなければなりません。

 

IT点呼を導入するメリット

IT点呼を導入するメリット

 

IT点呼を導入することで得られるメリットには、以下のようなものがあります。

  • 人件費の削減になる
  • 労働環境改善につながる
  • 正確な点呼を実施できる
  • 点呼記録簿の管理を効率化できる

一つずつ見ていきましょう。

 

人件費の削減になる

 

IT点呼の一つ目のメリットは、人件費を削減できることです。

 

これまでの点呼は、原則として運行管理者が対面で行っていたので、拠点ごとに運行管理者を配置する必要がありました。

 

また、運送業界は深夜から次の日にまたがって運行するケースも多くあるため、複数の管理者や補助者を設置し、不規則な時間の点呼に対応できるようにしておかなければならず、結果的に人件費が掛かることも珍しくありませんでした。

 

しかし、IT点呼を導入することで、各営業所ごとに配置が必要だった運行管理者を1つの営業所にまとめることができ、これまで別々に掛かっていた運行管理者の人件費や時間外労働を減らすことが可能になるのです。

 

労働環境改善につながる

 

先述の通り、ドライバーの労働時間によっては早朝や深夜に点呼を行う場合もあります。その際、各事業所に配置された運行管理者の人数が少なければ、時間外労働で対応する必要があるため、多くの負担がかかる状態となります。

 

しかし、IT点呼の導入によって1つの営業所に運行管理者をまとめることができれば、点呼を行う担当者を交代制にすることも可能です。そのため、各拠点の運行管理者が時間外労働で点呼をする必要も無くなるでしょう。

 

また、長時間労働が減ることによって労働改善につながるため、人材が定着しやすくなることもメリットといえるでしょう。

 

正確な点呼を実施できる

 

IT点呼によって、これまで手入力で行っていた作業の自動化が可能です。また、免許証リーダーやアルコール検知器、携帯端末などをシステムと連動させることで、手入力による入力ミスが減り、より正確な点呼とデータの管理が行えます

 

ほかにも、入力の自動化によってすべての従業員に対して同じ品質で点呼を行えるため、点呼者が誰であっても、正確なデータが記録でき、点呼の質自体も向上します。

 

帳簿の紛失や記入漏れといったトラブルも防止できることから、より確実な点呼や記録の管理を行うためにも、IT点呼はおすすめの方法です。

 

点呼記録簿の管理を効率化できる

 

これまでの手入力による点呼記録簿の作成は、ファイリングしたうえで物理的な保管が必要でした。しかし、IT点呼で記録したデータはクラウド上に保存されるため、ファイリングや保管の手間を軽減できます

 

ほかにも入力したデータへのアクセスもしやすさもメリットです。これは日ごろデータを確認する管理者だけでなく、必要に応じてデータの参照が必要な経営者にも役立ちます。

 

また、入力したデータは一元管理によって1カ所に集約することで、必要な情報をすぐに参照しやすく、安全性の向上や業務の効率化を図ることも可能です。

 

IT点呼の導入手順

IT点呼を導入する際は、条件を満たしたうえで点呼機器を用意し、運輸支局へ申請を行う必要があります。詳細な手順は下記の通りです。

 

  1. IT点呼を導入する条件を満たす
  2. 国土交通省が指定している点呼機器を導入する
  3. IT点呼の運用環境を整備する
  4. IT点呼開始日の10日前までに管轄の運輸支局へ申請を行う
  5. 全社員へ操作方法の教育を行う
  6. IT点呼の本格導入

 

IT点呼に必要な主な機器は、パソコンやカメラ、マイク、アルコール検知器、プリンターなどが挙げられます。また、点呼管理用のソフトウェアや必要に応じてスマートフォンや免許証リーダーの準備も必要です。

 

運輸支局への申請を行う際は、報告書と導入するIT点呼システムが掲載されたカタログを提出します。報告書のひな形は、各営業所や事業所を管轄している運輸支局のホームページからダウンロードが可能です。

 

なお、申請はIT点呼を開始する予定日から10日前までとなっています。期日に余裕をもって準備しておきましょう。

 

IT点呼の導入費用と導入までにかかる期間

ここではIT点呼の導入にかかる費用とその期間を紹介します。下記の表は全日本トラック協会の資料を参考に作成した導入費用と、かかる期間の一覧表です。

 

◆導入コスト・・・約100万円

導入するもの
導入費用
ハードウェア
(パソコン2台、カメラ2台、マイク2台、スピーカー2台、アルコール測定器1台、パピイライト)
60万円
IT点呼用のソフトウェア
(システムのインストール料、指導料)
40万円
ソフトウェア保守費用 3万円
 
◆導入期間・・・5か月

ターム
かかる期間
準備
(打ち合わせ、見積もりなど)
1か月
導入
(ソフトウェアの購入など)
3か月
稼働
(ルール決め、社員教育など)
1か月

 

導入コストは主にハードウェアとソフトウェア、保守費用に分けられます。また、上記はドライバーと点呼者の2者間用の設備となるため、IT点呼を実施する営業所が増えれば追加でハードウェアやソフトウェアが必要になり、その分の費用も掛かるでしょう。

 

IT点呼の導入を決定してから実際に運用するまでも、準備や教育などである程度期間がかかります。もし、導入を考えているのであれば、上の表を参考にいつから稼働するのか計画を立てておくと、スムーズに運用しやすいでしょう。

 

IT点呼の導入は助成制度を活用できる

IT点呼の導入コストは決して安くありませんが、導入における費用対効果は大きいものです。もし、費用が課題で導入を検討中の場合は、助成制度の活用がおすすめです。

 

なお、助成制度はGマーク認定によるインセンティブと中小事業者を対象とした助成金の2つに分けられます。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。

 

Gマーク認定によるインセンティブ

 

項目
詳細
対象 Gマークの認定を受けた事業所
補助対象 携帯型アルコール検知器
補助額 1台につき2分の1、上限2万円

 

中小事業者を対象とした助成制度

 

項目
詳細
対象 トラック協会の会員かつ、以下に当てはまる中小事業者が対象
・資本金か出資総額が、3億円以下の会社
・個人または従業員数が300人以下の会社
補助対象 ・周辺機器
・セットアップの費用
・サービスの利用料(契約期間中にかかった費用)
※周辺機器は国土交通省から認定を受けた機種のみが対象
※令和4年4月1日以降に利用開始または契約したものに限る
補助額 1事業者あたり上限10万円(1台分)
Gマークを所有する事業所は上限20万円(2台分)

 

IT点呼の基礎知識まとめ

IT点呼は、時間外労働の削減や労働環境の改善を目的に取り入れる事業所が増えています。

 

導入にはGマークの取得や有料認定が必要ですが、一つの営業所に運行管理者をまとめられるため、管理の効率化や点呼の正確性の向上といった事業者側のメリットも大きいでしょう。

 

また、導入には費用が掛かりますが、IT点呼に対応した機器やシステムの導入をはじめ、条件を満たせば助成制度を受けることも可能です。

 

IT点呼を導入する際にはIT点呼キーパーを活用すると便利です。IT点呼に対応したクラウド型の点呼システムで、営業所別のデータを一元管理できます。また、TUMIXコンプラとの連動で点呼時刻かを出勤時刻に自動で転用することもできます。

 

勤怠管理の効率化にも役立つシステムですので、IT点呼キーパーと併せてTUMIXコンプラの導入をご検討ください。

 

また、以下のリンクではTUMIXの導入によるDX化の事例を紹介しています。あわせてご覧ください。

 

2024年問題に向けてDXで効率化を目指す>>

 

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