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改善基準告示とは|対象や背景、車別ごとの改正点を解説

公開日: 2023/11/03

改善基準告示とは|対象や背景、車別ごとの改正点を解説

■この記事でわかること
  • 改善基準告示とは何か
  • 改善基準告示の改正によって変わったポイント
  • 改善基準告示に違反した場合の罰則
  • 改善基準告示で企業が受ける影響

 

改善基準告示は、ドライバーの労働時間を定める基準です。現行の告示は1997年から適用されていましたが、2022年に新たに改正され、2024年4月から施行されることが決まっています。この改正は長時間労働の対策として行われるものですが、なかには、具体的にどのような内容が変わったのか知らない事業者もいるかもしれません。

 

そこでこの記事では、改善基準告示の概要と、改正されたポイントについて紹介します。

 

改善基準告示とは

改善基準告示とは

 

改善基準告示は、正式名称を「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」といいます。これは、ドライバーの労働時間の基準を定めたものですが、2022年に改正が行われ、2024年の4月1日から新たに施行されます。

 

改善基準告示の改正により長時間労働の改善が行われることで、これまでと働き方が大きく変わる人も少なくないでしょう。

ここでは改善基準告示の対象や、改正内容などを紹介します。

 

改善基準告示の対象

改善基準告示の対象は、厚生労働省によって以下のように定められています。

 

改善基準告示の対象者は、労働基準法第9条にいう労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)であって、四輪以上の自動車の運転の業務に主として従事するものです。

 

引用:労働時間等の改善基準の ポイント|厚生労働省

 

ここであげられている対象者は、トラックやタクシー、ハイヤー、バスの運転手などです。そのため、運送業であっても社長や事務員といった運転業務に携わらない人は対象外となります。

 

また、「運転業務を主とする」という基準は、「物品や人を運ぶための運転時間が、労働時間の半分を超えている」「その運転業務が年間の総労働時間の半分以上が見込まれる」場合となります。

 

そのため、車を運転する方であっても、臨時で運転する場合は対象外です。加えてバイクも「4輪以上の自動車」に当てはまらないため、ここでは対象外となります。

 

令和6年4月1日から改正改善基準告示が施行される

改正改善基準告示は、1989年から施行されました。現行のものは1997年に改正されたものです。そして2024年年4月1日から、新たに改正されたものが施行されることとなりました。

 

ここでは改正改善基準告示が改正された背景や目的、改正された告示の適用日を紹介します。

 

改正された背景・目的

改正の背景として、トラックドライバーの長時間労働や、過重労働といった問題があげられます。

 

また、トラックドライバーの健康確保にも課題があります。たとえば、『運輸業・郵便業』は、脳・心臓疾患が原因となる労災認定の支給決定数が最も多く、2021年時点の死亡者数は22人でした。

 

そのため、労働者の健康確保や国民の安全確保を目的に改善基準告示の改正が求められ、今回の改正に至りました。

 

今回の改正ではトラックドライバーだけでなく、タクシーやバスの運転者についても、労働者の健康確保等を目的として同様の見直しが行われています。

 

改正の適用日

今回改正された改善基準告示は、2024年4月1日から施行されます

 

改正されたのは2022年12月23日ですが、適用までには猶予期間が設けられています。対象となる事業者は、この猶予期間のうちに、業務改善や環境の整備をおこなう必要があります。

 

改善基準告示による改正点

改善基準告示の改正は、ドライバーの種類によって変更された範囲や時間が異なります。

 

ここでは、改善基準告示によって改正された点をトラック運転手、タクシー運転手、ハイヤー運転手、バス運転手ごとにそれぞれ紹介します。

 

トラック運転者

改善基準告示の改正によって、拘束時間や休憩時間がこれまでと変わります。トラック運転手の場合、主な変更点は下表の通りです。

なお、()で記載された箇所は、労使協定による例外とされている時間となります。協定を結ぶことで、1年のうち6か月の間は例外の時間まで延長が可能です。

 

変更点 現行 適用後
1年の拘束時間 3,516時間 3,300時間(最大3,400時間)
1か月の拘束時間 293時間(最大320時間) 284時間(最大310時間)、284時間を超える月は連続3か月まで
1日の拘束時間 13時間を基本とし最大16時間 13時間を基本とし最大15時間(最大16時間)
1日の休息時間 継続8時間 継続11時間を基本とし、下限は継続9時間(下限8時間)
連続運転時間 4時間以内 4時間以内

 

改正によって、1年あたりの拘束時間は拘束時間は116~216時間短くなります。

 

また、休息時間は、これまで継続8時間以上と規定されていましたが、改正後は原則として11時間以上となります。

 

トラック運転者

 

また、1か月の拘束時間となる284時間を超える場合も回数に制限があります。具体的には1年のうちに284時間を超える月は6回までとなっており、連続して3回以内に抑えなければなりません。

 

 

タクシー運転者

タクシー運転者の場合、「日勤勤務者」と「隔日勤務者」によって改正のポイントが異なります

 

◆日勤勤務者

変更点 現行 適用後
1か月の拘束時間 299時間 288時間
1日の拘束時間 13時間以内を基本とし、最大16時間 13時間以内を基本とし、最大15時間(14時間超は週3回までを目安とする)
1日の休息期間 継続8時間 継続11時間を基本とし、継続9時間

 

日勤勤務者は、8時間勤務のように一般的な勤務形態で働く人のことです。

 

主な変更点として、1日の拘束時間の最大が16時間→15時間まで減り、14時間を超える日は週に3回までと制限が付きました。またこの変更によって1か月の拘束時間も299時間→288時間へと変更になっています。

 

◆隔日勤務者

変更点 現行 適用後
2暦日の拘束時間 21時間 22時間以内かつ2暦日の平均が1日あたり21時間以内
2暦日の休息期間 継続20時間以上 継続24時間以上かつ継続22時間を下回ってはいけない

 

隔日勤務者は、2暦日(2日分)の労働を1日で行い、その分長く休息をする勤務形態です。

 

1カ月あたりの拘束時間は262時間となっており、現行と改正後で変更はありませんが、2暦日の休息期間が継続20時間以上→継続24時間以上に変更となっています。

 

また、休息時間は継続22時間を下回ってはいけないという下限のルールも設けられました。

 

ハイヤー運転者

ハイヤーは、完全予約制でお客様の送迎を行う営業スタイルです。そのため、タクシー運転者の規定ではなく、ハイヤーの運転手独自の改正内容が適用されます。主な変更点や詳細は、下記の表の通りです。

 

変更点 現行 適用後
時間外労働について ・1か月50時間または3か月140時間
・1年間450時間を目安にした範囲
・1か月45時間および1年で360時間を超えないこと
・特別な事情により限度時間を超える場合は1年間960時間を超えないこと

 

主な変更点として、1か月の時間外労働時間が50時間→45時間へ変更となりました。また、これまでは3か月の合計が140時間以内とされていましたが、これは改正に伴って削除されています。

 

なお、1年の労働時間は450時間目安→360時間以内となりますが、特別な事情がある場合は、1年間に960時間以内を条件に延長することができます。

 

バス運転者

バス運転手の適用後の変更点として、1か月あたりの拘束時間が、1か月の通算か4週間の平均のいずれかで選択可能になったことがあげられます。その他の変更点やその詳細は下記の通りです。

 

変更点 現行 適用後
1年の拘束時間 原則3,380時間(最大3,484時間) 原則3,300時間(最大3,400時間)
1か月の拘束時間 4週間を平均とした1週間あたりの拘束時間が原則65時間(最大71.5時間※52週のうち16週まで)

・①②のいずれかを選択


1年:3,300時間以内(最大3,400時間以内)
1か月:281時間以内(最大294時間以内)

52週:3,300時間以内(最大3,400時間以内)
4週平均1週:65時間以内(最大68時間以内※52週のうち24週まで、かつ連続16週まで)

1日の拘束時間 13時間以内を基本とし、最大16時間 13時間以内、最大15時間(14時間超は週3回までを目安とする)
1日の休息期間 継続8時間 基本継続11時間、継続9時間を下回らない
連続運転時間 2日の平均が1日あたり9時間 4時間以内(休憩は1回10分以上、合計30分以上)

 

1日あたりの拘束時間は、基本13時間以内で変わっていませんが、最大時間が16時間→15時間に変更となり、14時間以上の拘束時間は週3回までとなりました。

 

また、1日の休息時間は継続8時間→11時間が基本となり、下限を継続9時間とするルールが追加されています。

 

なお、現行・適用後ともに、拘束時間の最大は貸切バスを運行する営業所が労使協定を締結することで延長が可能です。

 

改善基準告示に違反した場合の罰則

改善基準告示自体は法律ではないため、現時点では違反した際の罰則は定められていません。

 

しかし、違反をすると、労働基準監督署からの指導や、国土交通省による行政処分を受ける可能性があります。

 

厳密な罰則はないものの、指導や行政処分の対象となるため、新しい改善基準へ対応できるよう準備を進めましょう。

 

改善基準告示で企業が受ける影響とその対策

改善基準告示は労働環境の改善をはじめ、企業にとって良い影響を与えますが、一方で離職のリスクなど悪い影響もあります。それぞれの影響については下記でまとめていますので、こちらも参考にしてみてください。

 

〇良い影響

  • 労働環境の改善をアピールすることで採用面でプラスに働く
  • 労働環境の改善によって在籍している従業員の定着率が上がる可能性がある
  • 残業代が少なくなるため人件費の削減になる

 

×悪い影響

  • 労働時間の短縮による給料の減少で離職する可能性がある
  • 企業は、労働時間の短縮による対応を迫られる(コスト・時間・手間)
  • 会社の売上・利益が減少する可能性がある

 

悪い影響を受けないためには、各事業者ごとに対策が必要です。ここでは改善基準告示による悪い影響と、その対策を紹介します。

 

対策1.待遇面や労働環境の改善を図る

各事業所は改善基準告示に備えて、基本給の引き上げや福利厚生の充実、評価制度の設立といった見直しが求められます。

 

なぜなら、改善基準告示に沿って労働時間を短縮することで、ドライバーの残業や残業代が減ってしまうからです。さらに残業代を前提に働いていたドライバーは、給料や待遇に不満を感じ、より基本給の高い会社へ転職するリスクも考えられるでしょう。

 

たとえば評価制度を設ける際は、業務レベルなどに応じた適正な項目や基準を明確にすることで、従業員のモチベーション増加につながります。

 

対策2.クラウドシステムを導入する

改善基準告示は、違反をしても現時点で法的な罰則はないと説明しました。しかし、同じく2024年4月から施行される働き方改革関連法によって、年間の時間外労働時間に、960時間の上限が設けられます。

 

この関連法は法律であるため、違反した場合には罰則が課せられます。そのため、各事業所は改善基準告示だけでなく、働き方改革関連法による労働時間の規制に対応したより厳格な勤怠管理が必要です

 

しかし、ドライバーの出退勤時間は変動があり運行によっては日跨ぎ運行や長距離運行も発生することから、正確な勤怠状況をリアルタイムに把握することは難しいと思われます。そこでおすすめなのが、運送業専用クラウドシステムです。

 

運送業専用のクラウドシステムの中には出退勤の打刻や、既に利用している点呼・デジタコデータを取り込み、出退勤時間を計算することが可能なものもあります。勤務簿への記載や勤怠時間の計算にかかる時間を削減することがメリットとして挙げられます。

 

TUMIXは運送業に特化したクラウドシステムで、勤怠管理や配車管理だけでなく、改善基準告示に対応していることも特徴です。

 

日々の運行結果の数値も確認できるため、ぜひ導入をご検討ください。

 

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改善基準告示について|まとめ

改善基準告示は、ドライバーの長時間労働の改善を目的に新たに改正され、2024年4月から施行されます。

また、トラックドライバー以外にもタクシーやバス、ハイヤーの運転手も改正の対象となっており、各事業者は待遇や労働環境の改善を急がなければなりません。

さらに、同時期に働き方改革関連法のが施行されることもあり、日々の勤怠管理もこれまで以上に必要になります。そこで、クラウドシステムを使用することで管理の負担を減らすことが可能です。

 

TUMIXは、改善基準告示に対応した運送業界向けのクラウドシステムです。すでに利用中の会計システムやデジタコの連携も可能ですので、改善基準告示の対策を検討中の方はぜひお問い合わせください。

 

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