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改善基準告示に違反するとどうなる?罰則や違反となるケースを解説

公開日: 2024/11/29

改善基準告示に違反するとどうなる?罰則や違反となるケースを解説

2024年4月1日より、トラックドライバーの拘束時間や休息時間等の規定が改正された、新しい改善基準告示が施行されました。改善基準告示に違反しても懲役や罰金といった罰則はありませんが、違反が認められた場合は指導の対象となります。

 

今回は、運送業界において改善基準告示に違反した際の具体的な罰則や、改善基準告示違反にあたる条件は何かを解説します。

この記事でわかること
・改善基準告示に違反した場合の罰則
・そもそも改善基準告示の違反とは
・改善基準告示の違反に関して知っておくべきこと
・改善基準告示の遵守によって得られる恩恵
 

改善基準告示に違反した場合の罰則

改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)は法律ではなく、厚生労働大臣によって適切な労働条件の基準を定めた告示です。罰則規定はありませんが、労働基準監督署の監督指導により違反が認められた場合は、調査や指導の対象となります。

 

道路交通法や貨物自動車運送事業法に基づく運行管理規定に違反している疑いがある場合は、地方運輸機関に通報され、さらに調査や指導を受ける可能性もあります。

 

また、改善基準告示の違反が荷主の関与で発生している場合も警告の対象です。荷主がドライバーに長時間の荷待ちをさせている場合など、荷主の指示によって違反が起こった場合は、荷主勧告制度に基づいて荷主名と事案の概要が公表される場合があります。

 

そもそも改善基準告示の違反とは

改善基準告示は、トラック業界をはじめとする自動車運転者の労働時間の基準を定めたものです。運転時間や休憩時間のルールがあることは把握していても、改善基準告示の違反となる基準について、正確に認識していない方も多いかもしれません。

 

ここでは2024年4月に施行された主な改正点について、どのような場合に違反となるのかを具体例をもとに解説します。

 

1日の拘束時間・1日の休息期間

 

1日の拘束時間は基本的に13時間以内、延長する場合でも15時間が上限kiolp@[です。ただし、14時間を超える回数は可能な限り少なくなるよう努める必要があり、その目安は1週に2回までとされています。連続して14時間を超えることも推奨されていません。

 

また、勤務終了後の休息期間は継続11時間以上の確保が基本で、9時間を下回ってはなりません。ただし、宿泊を伴う長距離輸送の場合には、以下のような例外が適用されることがあります。

 

※例外:宿泊を伴う長距離運送に適用

1週間に2回まで、拘束時間を最大16時間まで延長することが可能です。また、1週間に2回まで、休息期間を継続8時間以上に設定することができます。

ただし、休息時間が継続9時間未満の場合は、運行終了後に必ず継続12時間以上の休息時間を確保しなければなりません。

 

違反となるのは以下のようなケースです。

  • 1日の拘束時間が15時間を超える
  • 1日の休息期間が9時間を下回る
  • 宿泊を伴う長距離輸送で、1日の拘束時間が16時間を超える日が週3回ある
  • 宿泊を伴う長距離輸送で、1日の休息期間が継続9時間を下回る日が週3回ある
  • 宿泊を伴う長距離輸送で、1日の休息期間が継続9時間を下回り、かつ運行終了後の休息期間が12時間未満

 

1ヶ月・1年の拘束時間

 

1ヶ月の拘束時間は284時間以内、1年の拘束時間は3,300時間以内でなければなりません。ただし、雇用主とドライバーの間で労使協定を締結する場合は次のような例外が適用されます。

 

※例外:労使協定を締結する場合に適用

1ヶ月の拘束時間を310 時間まで、1年の拘束時間を3,400 時間まで延長できます。ただし、労使協定を締結していても、1ヶ月の拘束時間が284時間を超える月は連続3ヶ月までが限度です。

加えて、1ヶ月の時間外・休日労働を含めた時間数は100時間未満にするよう努めなければなりません。

 

違反となるのは以下のようなケースです。

 

<労使協定を締結していない場合>

  • 1ヶ月の拘束時間が284時間を超える
  • 1年の拘束時間が3,300時間を超える

 

<労使協定を締結している場合>

  • 1ヶ月の拘束時間が310時間を超える
  • 1年の拘束時間が3,400時間を超える
  • 1ヶ月の拘束時間が284時間を超える月が連続で3ヶ月よりも長く続く

 

1日・1週の運転時間

 

1日の運転時間は、2日間の平均で1日あたり9時間以内に収める必要があります。ただし、「2日間」の数え方に注意が必要です。特定の日を起算日として前後の2日間を区切った際に、いずれも9時間を超えている場合は違反にあたります。

 

例えば4/1を起算日とする場合、3/31から4/1の1日間の平均運転時間が9.5時間であっても、4/1から4/2の1日間の平均運転時間が9時間以内であれば違反にはなりません。3/31から4/1の平均運転時間と、4/1から4/2の平均運転時間がいずれも9時間を超えている場合は違反となります。

 

改善基準告示 違反

画像引用:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省

 

さらに、1週間の運転時間は、2週間の平均で1週あたり44時間以内でなければなりません。特定の日を起算日として前後の週で区切り、それぞれの週の運転時間を合計して2週間の平均を算出します。

 

前後どちらかの週の運転時間が44時間以内でも、2週間の平均が44時間を超えれば違反となります。

 

改善基準告示 違反

画像引用:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省

 

連続運転時間

 

連続運転時間は4時間以内とし、4時間経過する前後に30分以上の運転の中断が必要です。ただし、連続で3回までを限度とし、おおむね10分以上であれば分割することも認められています。

 

なお、運転の中断は単に運転を止めるだけではなく、原則休憩をとって体を休める必要があります。

 

※例外:やむを得ない場合に限り適用

パーキングエリアやサービスエリアなどが満車で停車できない場合や、別の休憩場所に移動するために連続運転時間が4時間を超える際は、最大4時間30分まで延長が認められます。

ただし、この延長はやむを得ない場合に限られる例外措置です。原則として運転は4時間以内に抑え、余裕を持った運行計画を立てることが必要です。

 

例えば、下記図の①③④は連続運転時間4時間以内、または4時間経過後に合計30分以上の休憩をとっているので基準を満たしています。しかし、②は連続運転時間が4時間10分となっており、例外が適用されない場合は違反です。

 

⑤については10分未満の休憩が3回連続しているため違反の対象となります。

 

改善基準告示 違反

画像引用:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省

>>改善基準告示とは|対象や背景、車別ごとの改正点を解説

 

改善基準告示の違反に関して知っておくべきこと

改善基準告示の違反を避けるために、労働時間の計算にかかわる考え方について解説します。

 

運行計画だけでなく実態での基準を満たさなければ違反

 

運行計画で改善基準告示の基準を守っていても、実際の労働時間が基準を超えている場合は違反となります。計画段階だけでなく、実際の運行状況を常に監視し、必要に応じて適切に調整をすることが重要です。

 

改善基準告示における期間の考え方

 

改善基準告示では、「1日」「1ヶ月」単位で労働時間の基準が定められていますが、一般的な数え方とは異なることに注意が必要です。

 

改善基準告示における「1日」は、始業開始から24時間です。そのため、始業時間によっては労働時間が重複してカウントされる場合があります。

 

例えば、月曜日の始業が8時、火曜日の始業が7時の場合、月曜日の8時から24時間後は火曜日の8時となり、火曜日の就業時間と重なる状態です。この場合、火曜日の7~8時の1時間は、月曜日と火曜日の両方の拘束時間としてカウントされます。

 

また、「1ヶ月」は暦月ではなく、就業規則で定めた起算日から1ヶ月が計算対象です。例えば、起算日が1日であれば月末までが1ヶ月となりますが、起算日が5日であれば、翌月の4日までを1ヶ月とします。

 

なお、「1日」でダブルカウントされた時間は、「1ヶ月」の集計には含まれません。

 

改善基準告示の遵守によって得られる恩恵

改善基準告示を守ることは、単に指導や通報を避けるだけでなく、企業イメージを守るためにも重要です。コンプライアンスが徹底された企業は、取引先や見込み客からの信頼を得やすく、ビジネスチャンスを拡大することにもつながります。

 

また、労働環境が整った企業は人材の定着や採用にも有利です。運送業界ではドライバー不足が深刻な問題となっているため、改善基準告示を遵守することで、より良い労働条件を提供し、働きやすい環境が実現できます。

 

ワークライフバランスを重視する求職者や女性の採用にもつながり、多様な人材の確保が期待できるでしょう。

 

改善基準告示の遵守には以下のような対策が有効です。

  • 業務効率化
    配車管理ツールを使用することで、配車や運行計画の最適化が図れます。最適なルートを簡単に設定できるため、ドライバーと配車担当者の労働時間を削減し、燃料も無駄なく使うことが可能です。 『TUMIX配車計画』を活用すれば、運行計画がそのままドライバーの日報作成につながるため、報告業務の負担も軽減できます。

  • 勤怠管理の厳格化
    勤怠管理ツールを導入することで、労働時間の把握が容易になります。『TUMIXコンプラ』は、最新の改善基準告示にも対応しており、コンプライアンスを徹底するために有効なツールです。

  • 荷主への協力要請
    業務効率化や労働環境の整備は、運送会社だけで実現できるものではありません。荷主の協力を得て運送条件の見直しや適正な運賃の設定を進めることで、ドライバーの労働時間を改め、業務効率化や処遇改善のための資金調達も行えます。

 

>>2024年問題におけるドライバー・運送業への影響とは|対策も紹介

 

まとめ

改善基準告示に違反した場合、直接的な罰則はありませんが、労働基準監督署の指導や地方運輸機関への通報、ひいては企業イメージを損なうリスクがあります。拘束時間や休息期間、連続運転時間などの基準を正確に理解し、実際の運行でも遵守することを心がけましょう。適切な労働条件を整えることは、人材確保にも重要です。

 

改善基準告示の遵守には、業務の効率化や勤怠管理の厳格化、荷主への協力要請などの対策が欠かせません。TUMIXの新改善基準告示に対応したシステムを活用することで、拘束時間や休憩時間の管理を効率化し業務の負担を軽減できます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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