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IT点呼と遠隔点呼の違いをわかりやすく解説

公開日: 2023/12/01

IT点呼と遠隔点呼の違いをわかりやすく解説

IT点呼と遠隔点呼は、いずれも遠隔地から点呼を実施する方法ですが、導入条件や実施できる範囲など、複数の違いがあります。

 

そこでこの記事では、IT点呼と遠隔点呼の違いをわかりやすく解説していきます。運送業界で働く方は、ぜひ参考にしてください。

 

この記事でわかること
  • IT点呼と遠隔点呼は何が違うのか
  • IT点呼を引き続き実施できるのか
  • これからIT点呼を導入する意味はあるのか

 

IT点呼と遠隔点呼の違い

IT点呼と遠隔点呼の違い

IT点呼の上位互換が遠隔点呼と考えるとわかりやすいでしょう。遠隔点呼はIT点呼に比べて導入のハードルが低く、なおかつ実施可能範囲も広くなっています。

 

それぞれについて簡単に説明していきます。

 

IT点呼は、自動車運送事業者に義務付けられている「点呼」を、IT機器を使って行うことです。2007年から始まった点呼方法で、パソコン、ネットワークシステム、アルコール検知器などを使って、遠隔地から点呼を行います。ただし、導入するためにはGマークの取得など、高いハードルをクリアする必要があります。

 

一方、遠隔点呼は2022年4月1日より開始された新しい制度です。IT機器を使って遠隔地から点呼を行う点はIT点呼と同じですが、導入条件はIT点呼ほど厳しくなく、なおかつ実施できる範囲も広くなっています。

 

IT点呼、遠隔点呼それぞれについて詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせて参照してください。

 

 

導入するための条件の違い

IT点呼と遠隔点呼の、導入条件における違いは、Gマークの取得が必要かどうかです。

 

IT点呼を導入するためには、基本的にGマークを取得しなければなりません。ただし、優良認定を受けた事業所は例外的にIT点呼の導入が可能です。

 

Gマークの取得には、事業の開始から3年以上経っていることや、厳しい評価基準のクリアなどの条件を満たすことが必要となります。

 

Gマークを取得していない場合も「過去3年間で、第1当事者となる重大事故を発生させていない」「過去3年間で、点呼に係る行政処分等を受けていない」といった条件をクリアし、優良認定を受ければIT点呼を導入できますが、こちらもハードルは高いといえるでしょう。

 

しかし遠隔点呼の場合は、「機器・システム」「施設・環境」「運用上の遵守事項」の3点で要件を満たす必要があるものの、IT点呼と比較すれば導入のハードルは低いといえるでしょう。

 

Gマークの取得条件や遠隔点呼導入の条件に関する詳細は、以下の記事を参照してみてください。

 

 

機器に関する条件の違い

IT点呼と遠隔点呼のどちらも、国土交通省が定めた機器の導入が必要となります。機器に求められる条件は両者とも似通っていますが、遠隔点呼の方がより細かく定められています。

機器の条件や運用ルールは以下の表を参考にしてください。

 

区分 求められる機器の条件および運用上のルール
IT点呼 ・運転者の酒気帯び・疾病・疲労・睡眠不足等が随時確認できること
・アルコール測定の記録が自動で保存され、運行管理者が随時確認できること
遠隔点呼 遠隔点呼に関する基本要件

・運行管理者等が、カメラやモニター等の画面を通じてドライバーの状況を確認できること(表情、全身、疲労 など)

・アルコール検知器の測定結果を自動的に記録・保存を行い、そのデータを運管理者等がいつでも確認できること

運行管理者等の確認すべき情報 ・以下の情報が営業所等間で共有され、運行管理者等がいつでも確認できること

  • 日常の健康状態
  • 指導監督の記録
  • 運転者または乗務員台帳の内容
  • 車両の整備状況
  • 労働時間
  • 運行に要する携行品
  • 過去の点呼記録
なりすましの防止

・なりすましを防ぐために、事前に登録された者以外による遠隔点呼が行えない生体認証機能を有していること
点呼結果とその記録についてか

(点呼の結果・故障内容の記録について)

  • 記録は1年間保持すること
  • 記録の修正および消去ができない、もしくは修正された場合にその情報が残ること
  • 保存された内部構造のまま、CSV形式で一括で出力できること

(点呼結果について)

  • 定められた項目をドライバーごとに記録すること(氏名、日時、点呼方法 など)
  • 遠隔点呼を実施する営業所等間で共有ができる状態にすること

(機器故障内容について)

  • 故障が発生した際の、発生日時および故障内容が記録される機器であること

 

これに関しては、前述の「導入するための条件」と関係が深いといえます。元々は事業所の優良性が求められていましたが、昨今のICT(情報通信技術)の発展に伴い、性能の高い機器を導入することで優良性が緩和された形です。

 

ただし、IT点呼では高性能な機器を導入する必要がないため、設備にかかる費用は遠隔点呼よりも安く済みます。

 

施設・環境の規定の違い

IT点呼と遠隔点呼は、求められる施設や環境にも、以下のような違いがあります。

 

区分 施設・環境の規定 詳細
IT点呼 具体的な定めはない
遠隔点呼 環境照度の確保 ドライバーの表情などが明瞭に確認できる環境照度を確保すること
監視カメラの設置 運行管理者等が映像を確認できるように点呼をする場所に監視カメラ等を設置すること
通信環境・通話環境の確保 ・点呼が途絶えないように通信環境を整えること(映像が乱れる、音声が途切れる など)

・点呼での対話が妨げられないように通信環境を整えること(ノイズや雑音 など)

 

遠隔点呼では、環境照度の確保・監視カメラの設置・通信環境・通話環境の確保の3つが定められています。また、各要件についても「どの程度の照度か」「どこに設置すればいいのか」など、詳細な規定が設けられています。

 

一方、IT点呼は施設・環境に関する具体的な定めはありません。

 

実施できる範囲と連続可能時間の違い

IT点呼と遠隔点呼は、実施できる範囲や連続可能時間にも違いがあります。

 

また、Gマークを取得している事業者と、取得していない事業者は、同じIT点呼でも実施できる範囲が異なります

詳しくは以下のとおりです。

 

区分 点呼の実施可能範囲 点呼の連続可能時間
IT点呼(Gマークあり) 1.A営業所~A営業所の車庫 24時間実施可能
2.A営業所の車庫~A営業所の他の車庫 連続16時間まで
3.A営業所~B営業所 連続16時間まで
4.A営業所~B営業所の車庫 連続16時間まで
5.B営業所~B営業所の車庫 24時間実施可能
IT点呼(Gマークなし) 1.A営業所~A営業所の車庫 24時間実施可能
遠隔点呼 1.A営業所~A営業所の車庫 24時間実施可能
2.A営業所の車庫~A営業所の他の車庫
3.A営業所~B営業所
4.A営業所~B営業所の車庫
5.A営業所の車庫~B営業所の車庫
6.営業所~完全子会社等の営業所
7.営業所~完全子会社等の車庫
8.営業所の車庫~完全子会社等の営業所
9.営業所の車庫~完全子会社等の車庫

 

IT点呼は自社内のみで可能となっていますが、遠隔点呼は自社と完全子会社間でも実施することが可能です。遠隔点呼の方が幅広く実施できるため、より利便性が高いといえるでしょう。

 

また、IT点呼の範囲は連続16時間までに制限されてしまいますが、遠隔点呼はすべての範囲で24時間実施することが可能です。

 

運用上の遵守事項の違い

遠隔点呼には「遠隔点呼実施要領」内で以下の遵守事項が設けられています。一方で、IT点呼にはこのようなルールは設けられていません。

 

【遠隔点呼の運用上の遵守事項】

満たすべき項目 詳細
運行管理者等の遵守事項
  • 業務を遂行するために必要な情報を把握しておくこと(道路状況など)
  • 面識のないドライバーの遠隔点呼を行う場合は、事前に対面またはオンラインで面談をすること
  • 点呼漏れ等を防ぐために車両位置の把握に努めること
  • ドライバーの遂行品の保持状況や返却状況を確認すること
非常時の対応
  • 運行管理者等は、遠隔点呼によってドライバーが乗務できないと判断した際には、直ちにドライバーの所属する営業所の運行管理者等に連絡を入れること
  • ドライバーが乗務できない場合は、代わりのドライバーを手配する等の措置ができるように体制を整えておくこと
  • 停電や故障などで遠隔点呼の実施が不可能となった際の体制を整えておくこと
情報共有について
  • グループ期間で遠隔点呼を実施する場合は情報の取り扱い等に係る契約を締結すること
  • 遠隔点呼において個人情報を扱い場合は、事業者と対象者間で同意を得ること
  • 遠隔点呼の運用において必要な事項はあらかじめ運行管理規程に明記し、運行管理者等の関係者に周知すること

 

IT点呼と遠隔点呼の違いに関するよくある疑問

ここからはIT点呼と遠隔点呼に関するよくある代表的な2点の疑問と、その回答をそれぞれ紹介します。

 

遠隔点呼開始以前に導入したIT点呼は引き続き実施可能?

遠隔点呼開始以前にIT点呼を導入した場合、遠隔点呼開始以降もIT点呼は実施可能です。遠隔点呼の制度が開始された後も、IT点呼の制度はそのまま残っています。遠隔点呼開始以前にIT点呼を導入した場合、遠隔点呼開始以降もIT点呼は実施可能です。

 

これらは別々の制度であるためと考えてよいので、引き続きIT点呼を実施しても問題はありません。

 

いまからIT点呼を導入する意味はある?

導入のハードルが低く、実施できる範囲も広い遠隔点呼は、IT点呼の上位互換といえます。そのため、敢えていまからIT点呼を導入する意味はあるのか、と疑問に思う方は多いでしょう。

 

確かに点呼に限っていえば遠隔点呼の方が優れていますが、IT点呼はGマーク取得のインセンティブのひとつにすぎないという点がポイントです。

 

IT点呼を導入する際に必要となるGマークは、取得することで企業の信頼性を高めることができます。それだけでなく、IT点呼や遠隔点呼に必要な機器に対する助成金の支給・補助条件の緩和・違反点数の消去・各種有効期間の延長・保険料の割引など、数多くのインセンティブを利用することができます。

 

「IT点呼の導入」というよりは、「Gマークの取得」という観点で見るとメリットは大きいといえるでしょう。

 

また、上記でも触れましたが、必要となる機器の関係で、IT点呼の方が設備投資を安く済ませることが可能です。そのため、費用を抑えたい場合はIT点呼を選ぶという選択もあります。

 

 

IT点呼と遠隔点呼の違い:まとめ

遠隔点呼は、IT点呼の上位互換といって差し支えない制度です。

 

遠隔点呼はGマークを取得しなくても導入でき、自社だけでなく完全子会社間でも、24時間連続して実施可能です。

 

ただし、Gマークの取得については、遠隔点呼が開始された現在においても大きなメリットを持ちます。また、IT点呼は導入機器が細かく定められていないため、導入費用を安く抑えることが可能で、実施する施設や環境についても具体的なルールはありません。

 

自社が必要とする点呼方法を見極めて選ぶようにしましょう。

 

IT点呼キーパーについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

 

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