公開日: 2023/11/24
勤怠管理とは?目的や具体的な仕事内容・やり方を解説
勤怠管理は、法律やコンプライアンスを遵守したり、適正な給与を支払ったり、社員の健康を守るうえで欠かせない業務です。
しかし、労務部門や人事部門で初めて働く方は、勤怠管理の重要性についてあまり理解していないこともあるでしょう。
そこで本記事では、勤怠管理の目的や対象、内容、方法、注意点などを紹介していきます。
- 勤怠管理の概要と目的
- 具体的な仕事内容や勤怠管理の方法
- 勤怠管理の注意点
勤怠管理とは?
勤怠管理は、企業が従業員の勤怠状況を管理することであり、労働基準法で義務として定められています。労務・人事担当者は社員の勤怠データを数値化したうえで、適切に保存しておかなければなりません。
「勤怠」には出勤と欠勤という意味があります。具体的には、いつ出勤していつ退社したか、何時間働いたか、そのうちの休憩時間はどれくらいか、といった以下の項目を指します。
【勤怠管理で管理しなければいけない項目】
- 出勤時間
- 退勤時間
- 労働時間
- 休憩時間
- 時間外労働時間
- 深夜労働時間
- 休日労働時間
- 出勤日数
- 欠勤日数
- 休日出勤日
- 有給休暇の取得日数
- 有休残日数 など
上記のように、働いた時間だけでなく休んだ時間も管理するため、社員が心身ともに健康的であるかどうかの判断基準にもなります。過労働を防ぎ、労働環境を改善するためにも重要です。
勤怠管理の目的
勤怠管理は、以下の4つの目的のために行います。
- 労働基準法などの法律を守るため
- 正確な給与を従業員に支払うため
- 長時間労働を防ぎ従業員の健康を守るため
- コンプライアンスを厳守するため
それぞれ詳しく解説していきます。
労働基準法などの法律を守るため
労働基準法では、1日あたりの労働時間を8時間、1週間あたりでは40時間を原則として定めており、時間外労働に関しても上限を設けています。規定された労働時間を超えてしまった場合は法律違反となり、罰則が課せられます。
労働時間にまつわる法律を厳守するには、勤怠管理を行い、従業員一人ひとりの勤怠状況を正確に把握する必要があります。
また、従業員ごとの労働時間や労働日数といった勤怠情報の記入、3年間の保存も定めています。こちらも違反した場合は罰則が課せられます。
正確な給与を従業員に支払うため
勤怠管理の記録は、給与や健康保険料、税金などの計算をする際に用います。
勤怠管理が正確であれば、時間外労働や休日出勤などを見落とすことがなく、賃金未払いなどのトラブルを防止できるでしょう。
また、正確な勤怠管理は事務処理を円滑にするだけでなく、社員からの信頼関係にもつながります。風通しの良い職場にするためにも、勤怠管理は重要な役割を担っているのです。
長時間労働を防ぎ従業員の健康を守るため
日本では、働きすぎによる過労死や自殺、精神障害が多発しており、社会問題となっています。これは労働者本人だけでなく、その家族や周りにとっても大きなダメージを与えてしまう深刻な問題です。
そのため、企業は厳格な勤怠管理を行い、労働時間を適法の範囲内に納めることで、従業員を守らなければなりません。
勤怠の状況は、長時間労働や休日出勤、休憩時間などを確認できるため、働きすぎを事前に防ぎ、精神面や身体面の健康を守ることができます。状況に応じて、産業医やカウンセラーと面談する機会を設けることも大切です。
最悪の事態を引き起こさないためには、社員一人ひとりの勤怠状況を徹底的に管理することを忘れてはいけません。
コンプライアンスを厳守するため
近年問題視されている、賃金の未払いや過酷な長時間労働を強制している、いわゆるブラック企業は、法律はもとより社会的なモラルにも反する存在です。
コンプライアンスは「法令遵守」という意味を持つ言葉ですが、それは大前提として、社会的規範やモラルを尊重するといった意味合いもあります。
つまり、適切な勤怠管理は、健全な経営を行っていることを示す指標です。世間からブラック企業と言われることを防ぎ、会社のイメージアップにもつながります。
コンプライアンスを守ることは社内全体で取り組むべき課題ですが、労務・人事担当者は率先して牽引していくことが大切です。
勤怠管理の対象
勤怠管理はほとんどの企業が対象となりますが、一部例外もあります。また、対象外となる従業員がいることも覚えておきましょう。
次の章では、どの企業・従業員が勤怠管理の対象となるのかを具体的に紹介していきます。
対象となる企業
勤怠管理が求められるのは、労働基準法の労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用されるすべての事業場です。業種かどうかに関わらず、ほとんどの企業で勤怠管理が求められます。
ただし、農業や水産など、自然や天候によって業務進行が左右される職種は対象外です。
対象となる従業員
勤怠管理の対象者は、「労働基準法第41条に定める者」と「みなし労働時間制が適用される労働者」を除いたすべての者と規定されています。
一方、対象外となるのは以下のような従業員です。
- 農業、水産業などの業務を行っている者
- 管理監督者(年休の規定は適用される)
- 監視または断続的労働(管轄の労働基準監督署の許可を得た場合に限る)
- 宿日直勤務(管轄の労働基準監督署の許可を得た場合に限る)
- 機密の事務を取り扱う者(秘書など、経営者と業務を行う者)
- 専門性の高い業務を行う者(衣類や広告等のデザインの考案、情報処理システムの分析や設計 など)
- 営業職など、事業場外で業務を行う者
- 企業の本社などで企画、立案、調査および分析を行う者
上記からもわかるように、対象外の従業員は一部の限定的な人たちです。基本的には勤怠管理の対象になると覚えておきましょう。
ただし、業務のなかの一部だけ営業などの事業場外労働を行う場合は、その部分だけは勤怠管理の適用から除外されます。
なお、勤怠管理の対象でない者であっても、健康の確保を図るために適切な労働時間の管理を行う責務はあります。
勤怠管理の仕事内容
勤怠管理の具体的な仕事内容は以下のとおりです。
- 出退勤・欠勤・遅刻・有給休暇等の記録・集計
- 残業時間・有給休暇数の動向の監視
- タイムカードの打刻がない日の理由の確認
- 残業申請有無がある場合の原因の調査
- 有給休暇が増えた従業員に疾患等がないかの確認・監視 など
従業員ごとの労働状況を正しく把握し、法律に沿った休憩時間を取れているか、労働時間を守れているかなどを厳しくチェックしなければなりません。
また、所定労働日に打刻できていない従業員がいた際には、直接本人に出勤確認を行うこともあります。
さらに、打刻を行った時間と実際の労働状況に乖離がある場合には、実態調査を実施し、正しい労働時間に補正しなければなりません。これは厚生労働省によって定められた、非常に重要な業務の一つです。
勤怠管理の方法
勤怠管理の手法は、主に以下の4つに分類されます。それぞれメリット・デメリットがあるため、自社に合ったやり方を選択してください。
勤怠管理の方法 | 必要なもの | 管理のしやすさ |
---|---|---|
紙の出勤簿 | ・紙(毎月) ・筆記用具 |
・PCへの入力、集計の時間がかかる ・リアルタイムの勤怠を把握できない ・保存場所の確保が必要 ・データを探すのが大変 |
タイムカード | ・本体 ・用紙(毎月) |
・PCへの入力、集計の時間がかかる ・リアルタイムの勤怠を把握できない ・保存場所の確保が必要 ・データを探すのが大変 |
エクセル | ・PC ・ソフトの利用料(毎月) |
・入力エラーやミスなどが起こりやすい ・リアルタイムの勤怠を把握できない |
勤怠管理システム | ・初期費用 ・ソフトの利用料(毎月) |
・自動で集計してくれる ・グラフ化などの分析も作成でき、改善に役立てられる ・リアルタイムの勤怠を把握できる ・データがすぐに見つかる |
各手法の特徴を詳しく紹介していきます。
紙の出勤簿
用紙に出勤時刻、退勤時刻、休憩時間、残業時間などの情報を書き込む方法です。
紙の出勤簿は、導入費用やランニングコストを低予算で抑えられます。また、出退勤時刻や休憩時間など、勤怠管理に関するあらゆる情報を1枚のシートにまとめられるのもメリットです。
ただし、不正申告や記載ミス、サービス残業につながりやすい点がデメリットです。また、PCへの入力や集計業務も発生するため、管理側の負担も大きくなります。
また、2019年4月から施行された「客観的な記録による労働時間の把握」に当てはまらないため、以下のガイドラインを満たさなければなりません。
運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと
② 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把
握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働
時間の補正をすること
③ 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻
害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を
超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働
者等において慣習的に行われていないか確認すること
引用:労 働 時 間 の 適 正 な 把 握 の た め に – 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
上記のとおり、管理者側の負担が大幅に増えてしまうため、あまり効率的なやり方とはいえません。
タイムカード
タイムレコーダーに用紙を入れ、勤怠を打刻する方法です。一人1枚のシートを利用し、1ヵ月分の勤怠を記録していきます。
タイムカードのメリットは、打刻方法が簡単なので幅広い世代で使いやすいという点です。
一方デメリットとしては、打刻忘れが起きる可能性が挙げられます。
また、紙の出勤簿と同様に管理側の負担が大きく、保管場所の確保する必要があったり、確認するときに探すのが大変だったりという点もデメリットです。
なお、タイムカードは、手書き修正に関しても厳格な手順を踏む必要があります。
エクセル
従業員が自分でエクセルに勤怠を入力する方法です。
PCとエクセルは導入している企業が多いため、新たに用意するものがなく、比較的導入しやすいでしょう。インターネットで検索すれば、勤怠管理用の豊富なテンプレートを無料でダウンロードできます。
また、数式を設定することで、従業員ごとの労働時間を楽に計算できるのもメリットです。紙やタイムカードと比べて管理者側の手間がかかりません。
ただし、従業員の手による入力のため、入力ミスや不正入力などのリスクがあり、客観的な記録とはならないことに注意すべきです。また、分析や集計するには、複雑な計算やグラフの作成といった手間が必要となります。
勤怠管理システム
勤怠管理システムは、勤怠の入力をPC、スマートフォン、ICカード、生体認証などのシステム上で行い、集計や分析まで一貫して行うツールです。
システムによる打刻のため、不正打刻や記入ミスを防げます。また、給与システムなどのツールと連携することもできるため、給与計算のミスを減らせるのもメリットです。さらに、クラウド型のサービスであれば、在宅勤務や出張時でも手軽に勤怠申請・承認できます。
また、ICカードや生体認証など、さまざまな打刻方法が用意されているため、不正打刻やなりすましといったリスクを軽減できます。超過勤務のアラート機能もあり、36協定に違反することも防げます。
ただし、勤怠管理システムはさまざまなツールがあり、それぞれ特徴や機能性が異なるため、自社の勤務形態にあった製品を導入することが重要です。もし不適切な製品を選んでしまうと、うまく活用できずコストの無駄となってしまいます。
勤怠管理システムについては、以下の記事で詳しく紹介していますので、具体的な内容を知りたい方は併せてチェックしてみてください。
勤怠管理を行ううえでの注意点
以下に当てはまる従業員の勤怠管理は、それぞれ注意しなければならない事項があります。
それぞれ見ていきましょう。
扶養控除内で働く従業員の勤怠管理について
従業員が配偶者の扶養に入っている場合は、扶養控除内で働けるよう、年収や労働時間を把握し、それに基づいたシフト作成が必要となります。
所得税が発生する「103万円の壁」や、就業先の社会保険への加入が必須となる「106万円の壁」など、控除内で勤務するにはさまざまな規定を守らなければなりません。従業員が希望する働き方を叶えるには、正確な勤怠管理が求められます。
そのため、労務・人事担当者は従業員と面談などを行い、しっかりと希望条件をヒアリングすることが大切です。希望を把握したら、シフトの見直しや調整を適切に行いましょう。
アルバイトやパートで働く従業員の勤怠管理について
正社員と違い、アルバイトやパートの場合は勤務日数、勤務時間、休日が、従業員によって異なります。そのため、勤怠管理を適切に行うためには、勤怠情報を正確に把握しておかなければなりません。
また、従業員ごとに給与も違うため給与計算も複雑です。効率化を重視するならば、勤怠情報に紐づき自動で給与計算してくれるシステムを導入するのが良いでしょう。アルバイトやパートはシフト制の勤務形態が多いため、シフト作成機能がある勤怠管理システムを選ぶのもおすすめです。
テレワークで働く従業員の勤怠管理について
コロナ禍をきっかけに、テレワークやフレックスタイムを導入した企業も多いでしょう。時代の変化に合わせて、勤怠管理もアップデートしていく必要があります。
テレワーク下では、オンラインによる自己申告制が一般的です。従業員の勤務状況を正確に把握できるわけでないため、社内ルールを徹底し、社員に共有する必要があります。また、勤怠時間に乖離がある場合には実態調査を行い、勤怠管理の適正化に努めなければなりません。
テレワークを導入している企業であれば、遠隔地にいても勤怠入力できるクラウド型の勤怠管理システムがおすすめです。リアルタイムで勤怠情報を確認できるため、利用者だけでなく管理者側の手間も削減できます。
勤怠管理とは?のまとめ
勤怠管理は、法律を守る・適正な給与を支払う・社員の健康を守る・コンプライアンスを厳守する、という4つの目的を果たすため、ほぼすべての企業が行わなければならない義務です。
勤怠管理の方法はいくつかありますが、正確な記録や業務効率化のためには「勤怠管理システム」を活用するのがおすすめです。テレワーク時でも手軽に勤怠入力でき、勤怠状況の分析や集計も自動で行ってくれます。